Inagaquilala

TOMORROW 明日のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

TOMORROW 明日(1988年製作の映画)
3.8
1945年8月9日午前11時2分、長崎に原爆が投下された時刻である。映画はその1日前から始まり、長崎に住む市井の人々の日常が交互に描写されていく。蝉採りに興じる子供たち、臨月を迎えている主婦、空襲警報のなかで結婚式を挙げる夫婦、叶わぬ恋に駆け落ちを図ろうとする若い恋人たち、外国人捕虜の命を助けようとする軍属の青年、市電の運転手、写真館の店主などなど、人々の暮らしが、その運命の時刻に向かって、交互に描かれていく。その描写の仕方にはケレンなどなく、静かなカメラワークのなかで淡々と続いていく。まさに嵐の前の静けさとでも言おうか、その日常があたり前であればあるほど、その後にくる運命の時を思えば、言いようのない「悲劇」として観る者の目には映っていく。かなりファルムの状態は悪く、画面に「雨」は降るが、それがこの映画にさらなるリアリティを与えているような気もする。原作は井上光晴氏の小説。このタイムリミット・ドラマのアイディアは、もちろんこの原作にある。ラストのクレジットに撮影助手として「三池崇史」の名前があったのは、ちょっとした驚きでもあった。
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