冴えない独身の中年男(小沢昭一)が、同棲相手の少女(大楠道代)を淑女に仕立て上げようとするのだが、次第に立場が逆転した倒錯状態へと落とされてしまう。谷崎潤一郎の同名小説を映像化している、エロティック・ドラマ。筆者は原作を読了済み。
原作は大正時代の物語だが、本作では時代設定を現代へと移行。そのため、原作のハイカラムードは全面カットされており、西欧ファッションはサイケデリックに、社交ダンスはゴーゴーダンスに、ヒロインは中性的なボーイッシュ娘に変更されている。
原作のモチーフを保持させたまま、その時代背景を公開当時の時代背景へと横滑りさせているところが面白い。原作のもつ先見性(=女性上位時代)を踏襲しつつ、谷崎と増村の両者が抱えている「自立した女性像」の化学合成を実現させている。
男性陣が原作と同じ台詞回しでヒロインを担ぎ上げていくため、違和感が生じている部分があるけれども、小説から映画へのコンバートには成功している。増村保造流映画術を心底楽しむことが可能。