鋼鉄隊長

老人Zの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

老人Z(1991年製作の映画)
4.0
購入したDVDで鑑賞。

【あらすじ】
大学生の晴子はボランティアで寝たきり老人、高沢喜十郎の介護をしていた。しかしある日、高沢老人は、第6世代型コンピューター搭載の看護ロボット「Z-001号機」のモニターになる…。

 深そうで深く無い、少し深い社会派コメディ・アニメ。
 四半世紀前に老人介護問題と人工知能に注目した先見の明には驚かされる。しかしながら、この作品の最大の魅力は、ぶっ飛んだエンターテイメント性にある。特に暴走した「Z-001号機」は、周辺の機械を取り込んで巨大化、パチンコ屋を破壊し、軍事用ロボットと殴り合いの戦闘を繰り広げたりと、特撮映画さながらの活躍を見せる。
 また、意外な映画ネタも多い。暴走したZのコンピューター「高沢ハル」のモデルは、『2001年宇宙の旅』に登場した「HAL 9000」。遺影に写る高沢ハルの姿は、『東京物語』で老夫婦の妻を演じた東山千栄子にも似ている。細かな所では、老人ハッカーが遊びでハッキングしたアメリカ企業として「タイレル社」(『ブレードランナー』にてレプリカントを開発した企業)が登場している。ちなみに設定資料では、端役の立花教授のモデルが『ウルトラQ』の一の谷博士となっている。主観だが、セル画アニメ時代末期の作品は、様々なジャンルから着想を得たような作品が多いように感じる。この小ネタからも感じる熱量の凄まじさが、作品をさらに盛り上げている。
 そしてこのハチャメチャな物語の中に、「人の手による愛情は介護に必要か」といった真面目なテーマがしっかり内包されている。このテーマを掘り下げる重要人物として、人による介護を主張する晴子と、介護環境をロボットで改善しようとする厚生省(当時)の寺田さんがいる。一見正反対に思える両者の考えは、どちらも人々のことを思ってであり、だからこそ二人の掛け合いは熱い。個人的には、寺田さんの口癖である「厚生省を舐めるなよ!」と、最後に見せる彼の男らしさが好き。
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