明石です

アメリカン・プレジデントの明石ですのレビュー・感想・評価

アメリカン・プレジデント(1995年製作の映画)
4.8
大統領が銃規制のロビイストと恋に落ちてしまった!そしてスキャンダルが勃発し云々という、シリアスなジャケットからは想像もつかない軽妙洒脱な、茶の間で楽しめる大統領ラブコメディ。後半は意外とよくできた胸熱ドラマ。主演はマイケル・ダグラス、脇を固める助演にはマイケルJフォックス、マーティン・シーンと私得のキャスティングが嬉しい。しかしヒロインは『アメリカン・ビューティ』のアネット・ベニング。

ホワイトハウスを舞台にした奇抜な設定の一方で、ストーリーはいつものロブライナーの映画。立場の違いを超えて恋に落ちる2人、壮大な音楽とともに迫り来る危機、そして全てを乗り越えた上での大団円。ややクラシカル過ぎるほどにクラシカルでひねりもあまりない。でもそれ以外何がある?と言わんばかりの潔さが個人的にはかなり好き。これだけよく書かれ、よく演じられた映画に低評価をつける理由は(ヒロインを別にすれば)ない。ここに出てる人みんなを好きになる映画ですね。マイケル・ダグラスもJフォックスもマーティン・シーンも114分前よりもっと好きになった。

恋人とのスキャンダルで支持率が下落し、国民の感情とともに離れていく恋人。そして国民からの支持を取り返す中で恋人との気持ちも取り戻す、みたいに完璧に公私が連動していて、ひとつ上手くいかなくなると全てがうまくいかなくなる(中盤)一方で、ひとつ上手くいき出すと全てがうまくいく(終盤)という図式化されたストーリーが凄くロブライナーっぽい。良い意味で。そして悪役の大統領候補が、民衆の恐怖を煽り敵を作り出すことで票を集めることにしか関心のないまさにドナルド・トランプのような人物で、その相手をラストでしっかりと論破するところにカタルシスもある。こういう単純な容れ物に濃いドラマをぶち込まれると、またか!と思いつつもしっかり感動できてしまう。理性よりも感性がこの映画を良いと言っている。

アメリカ国旗を燃やした過去のあるロビイストの恋人を、大統領候補やマスコミに叩かれたあとの大統領のスピーチ「言論の自由は対立を生み出す。ある人が擁護することはあなたが懸命に反対することかもしれない。ここは自由の国だ。旗を焼いて抗議する権利が守られることこそ言論の自由なのだ」に心打たれた。マイケル・ダグラスは大勢を前にした演説が毎度のことながら超一級ですね。たしかポルノ雑誌の創刊社の伝記映画(ラリーフリント)で「俺みたいに糞に塗れた人間の主張を法律とやらで禁じられないことが言論の自由じゃないのか」みたいなことを言ってた覚えがあるのだけど、まさしくそうだなと110%同意させられる。

——好きな台詞
「大統領がデートして何が悪い。ウィルソンもした。デートと求婚し結婚した。国際連盟も設立した」

「彼らはマイクを取る人に耳を貸す。砂漠で飢えて水を求め、水が幻と分かり、砂を飲む」
明石です

明石です