てっちゃん

忘れられぬ人々のてっちゃんのレビュー・感想・評価

忘れられぬ人々(2000年製作の映画)
3.7
カルト宗教映画祭りの最後の4本目はこちらです。

本作は、私の敬愛する高橋ヨシキさん、てらさわホークさん、柳下毅一郎さんの御三方がやられているYouTubeチャンネル”BLACKHOLE”でのカルト宗教映画特集にて、本作を紹介されており、惹きつけられるものがあったので鑑賞しました。

往年の役者さんたちが出演されているようですが、勉強不足な私が存じ上げない方達でした。
だがしかし、やはり深味が違う主演御三方の風貌なりオーラがこれぞ燻し銀(こういう言葉を使いたいだけ)!という感じで堪らんかったわけです。

戦争を経験し、平和ボケした現代に戸惑い、戦争のトラウマと今なお戦っており、戦友を大事にし、義理と人情は忘れることない人柄は、昔ながらでもあり、これが人間ってもんよって思う生き様を見せてくれる。

物語の序盤は、下町の人情劇と戦死した戦友から受け取ったあるものを巡る物語って感じで、のほほんな感じで進んでいくんだけど、徐々に登場人物たちが絡み合っていき、不穏な陰が覆尽くそうとしていく。

その陰の様子が実に巧みで、台詞で説明することなく映像で説明していく手練な手腕で、テンポよく物語を進めていき、ここぞ!とばかりのシーンではきっちりと決めてくるあたり安定感すごいです。

そこからの流れは言うまでもないでしょう。
大切な人たちが善意ある人たちが、カルト宗教(霊感商法と言った方がいいかもしれない)野郎たちの餌食へとなっていく。
そのカルト宗教の喰い物にする感じが、ひたすらに邪悪。
あの手この手で喰い物にしていく。

側からみると、そんなの怪しいからやめとき!って思うんだけど、弱っているときに、優しい言葉を囁きかけられる(同体になってくれていると錯覚してしまう)と、その優しい言葉を信じてしまう。

そのカルト宗教の最終的な目的は?
"金"。
ただそれだけである。
そのために欺す術を徹底的に極めている。
そんなもの悪と言わずに何という。

気になる点があったので少し。
子役の子があまりにも台詞を読まされているのが前に前に出ていて笑ってしまったけど、だんだんと癖になってくる感じがしたので、にこやかに観てました。

これは1番書かなければと思うこと。
本作の主人公らは、戦争で暴力を目の当たりにしている。
それで今でもトラウマを抱えているのだけど、なら何故、暴力以外で解決しなかったのか。
暴力の恐ろしさを知っていたのなら、それはいかんでしょ。
行き着く果ては、暴力しかありません、って決してかっこいいものではないなと感じてしまった。

少しもやもやが残る最後ではあったけども、見応えあることに変わりはない作品でした。
てっちゃん

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