TAKU

ソドムの市のTAKUのレビュー・感想・評価

ソドムの市(2004年製作の映画)
5.0
*同名タイトルなパゾリーニの遺作とは関係なし。

18世紀、俎渡海(ソドム)市兵衛は婚約者を呪い殺した罪で二人の女、テレーズとキャサリンを責め殺した。しかし、それがまったくの濡れ衣だと判った途端、俎渡海一族に本当の呪いが襲いかかった。そして300年後、俎渡海家子孫・市郎は、自分を恋い慕うキャサリンの生まれ変わりの妹に婚約者を毒殺される。それによって、市郎は盲目の居合抜きの極悪人「ソドムの市」へと変貌し全世界を混乱と恐怖に陥れようとする。そこへ現代に転生したテレーズが復讐の女刑事となって、ソドムの陰謀に立ちはだかるのだった。

『リング』、いや『発狂する唇』や『血を吸う宇宙』の脚本でおなじみ高橋洋が「映画番長」というプロジェクトで作った初監督作品。しかし、中身は彼の好きな映画をごった煮にした高橋洋版『キル・ビル』のような様相を呈している。盲目の居合抜きは『座頭市』だし、『続・荒野の用心棒』のジャンゴよろしく棺桶を引きずりながら荒野を歩く。ソドムが企む犯罪がドクトル・マブゼだったり、クライマックスが『子連れ狼』のようなスプラッター時代劇だったりともう何でもあり。

しかし、低予算だからか、それとも確信犯なのか、本作は完膚なきまでの学生映画感覚で作られたことによって、高橋洋という一人の天才の狂気がさく裂していた。新幹線が脱線する場面はプラレールを使い、ハトや飛行機が飛んでいる場面ではオモチャにワイヤーを吊るしただけ。30代が10歳の子供を演じるなどの無理な設定を隠そうともしないチープな演出、いきあたりばったりでご都合主義全開のストーリー、、そしてラストに登場するドイツ文学者の岩淵達治のドヤ顔感。すべてが学生映画ノリ。

だが、普通の映画だったら欠点になってしまうようなディティールも、高橋洋の「これがやりたいんだ!」という熱意の方が勝ってしまっているので、気になるどころか、面白おかしく観ることができた。

そんな本作は、インディペンデント映画が行くところまで行ったしまった怪作にして、「例えスジ・ヌケ・ドウサが良くても、映画の神様が降臨するとは限らない。そして、映画で遊ぶんだったらこのぐらいちゃんと遊べ!」という映画監督を志す者たちへのメッセージでもある。一度くらいは観て損はないのではないだろうか。責任は取らないけど。