スーパーエイプマン

おしどり駕篭のスーパーエイプマンのレビュー・感想・評価

おしどり駕篭(1958年製作の映画)
3.5
1958年まさに東映時代劇黄金期の、陽気さだけで言うならば『鴛鴦歌合戦』をも遥かに超えるマキノの歌物ロードムービー。
なんともでたらめな物語以上に、平面的な画面と全体的に明るくスターの顔がよく見えるよう照らされた照明が、ベタッとした質感を作り出し、人物からは奥行きを排除し、明朗快活な画面を創出する。ただそれだけで終わらないのがマキノ監督作たる由縁であり、会話やら物語の捌き方はテンポ良く、随所で歌や立ち回りが盛り込まれ、飽きさせない。
完全なるプログラムピクチャーであり、明らかに流しで撮ってるような場所も散見される緩い映画ではある(本作は"政治的理由"によって美空ひばりの役柄が変更されたことで、初稿から脚本に手が入り、更に現場でマキノ本人が台詞を足し引いたという話があるが、この話も納得できるほど会話があまりに冗長なシーンがいくつかある。)が、葛藤や心情などをこれ見よがしに描かなくても、映画への信仰心が存在していた時代の幸福な快作として忘れがたい。