さすらいの用心棒

どたんばのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

どたんば(1957年製作の映画)
3.9
坑内に取り残された五人を救出するため、酸欠というタイムリミットを課せられながら奔走する人々を描いた群像劇。

原作・菊島隆三で脚本が橋本忍という珍しい組み合わせ。
縦横無尽に移動するカメラワークは内田吐夢監督ならでは、というべきか、一枚の画としでではなく空間の立体化という非常に映像的な手法で物語を引き立てて、見ていてまったく飽きることがない。
どんなに手を尽くしても救助できない焦燥感、命を懸けて救おうとしても壁にぶち当たる人間の無力感は橋本忍節が炸裂しているが、橋本忍にしてはかなり珍しいエンディングを迎えることになる(ネタバレか?) 相変わらず記憶に残るセリフが多い。
ただ、若干不満をあげるならば、坑内のドラマがほとんどない点だろう。閉じ込められた炭鉱夫をひとりひとり紹介してゆくぐらいだし、その内のひとりは志村喬なのだから何かひとつぐらいドラマがあってもいいと思うのだが、恐らく生死不明のなか救出を続行するか、しないかの諦めのムードをより生々しくする効果を狙ってのことか。
大量の岩と泥水、大規模な屋外ロケなど、かなり予算をかけたように見えるが、VHSすらないとは。