いののん

キャッチ22のいののんのレビュー・感想・評価

キャッチ22(1970年製作の映画)
4.2
エキストラのいない戦争映画



細かなことを忘れてしまったとしても、終盤からラストにかけての一連のシーンを、私はずっと忘れないと思う。いつまでも、心に残り続けると思う。そして、その意味を考え続けると思う。


航空部隊。任務終了となるには、責任出撃回数を飛ばなければならないけれど、その回数はどんどん引き上げられていき、結局のところ、任務は終了させてもらえない。狂ってしまったと判断されたら除隊となるから、狂ってしまいたいのだけれど、自分は狂ったと認識していたら(狂ったことを認識できるということは、つまりは正常な判断ができるということなので、結局のところ)除隊させてもらえない。みんながみんな、狂っているような正常のような。もういったい、何が正常で何が狂っているのかわからない世界。でも、それは、戦時でなくとも、今、ここと地続きの世界だ。落とし穴に誰かをはめるのか、自らが落ちるのか。それとも自分は今、すでに落とし穴に落ちているのだろうか。


みんながみんな、かろうじてどうにか正気を保ちながら狂っているように思えた。それは完全に狂ってしまうよりも、猛烈に苦しいことに違いない。


終盤、上司たちが、ヨッサリアン大尉(アラン・アーキン)に持ちかける条件。その条件が、本当に凄くて、私は今、そのことを猛烈に凄いと思っている。私はそこに、権力の本質をみた。「国家」や「権力」が「個人」に持ちかける甘い取り引き。戦争という状況下では、「国家」や「権力」の悪魔性が、ことのほか、むき出しになる。「国家」あるいは「権力」を前に、「個人」であり続けようとすること。個として立ち続けること。


気持ち良いほどの青さとともに、海の青さも、印象に残る。


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*先日観た『M★A★S★H』と同じ1970年の制作。北爆開始から5年経ったところ。この映画、公開時には相当な衝撃を与えたことだろう。

*えっ、こんなところでこの曲かける?
(2001年宇宙の旅のあの曲)ニヤニヤ笑いましたw

*2度観て、3度目はマイク・ニコルズ監督と、スティーブン・ソダーバーグ監督との対談(解説つき)で鑑賞。「ここは素晴らしいショット」とか、「この映像は素晴らしい」とかの合いの手が入り、とても楽しかった。(3度ともウトウトしたことを正直に告白します。ウトウトしたけど、それでも良かった!)
そしてその対談によると、兵士たちの目が釘付けとなる、すんごいおっぱいは、パッド7枚、入れてたらしいよ!
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