翔海

エレファントの翔海のレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
3.7
【脆い世界】今にも崩れそうなくらい。

オレゴン州ポートランドにある高校の話。酒に酔った父に車で送ってもらい学校に登校しするジョン。公演を散歩するカップルを撮る写真部のイーライ。親の愚痴やダイエットの話に花を咲かせる三人娘。アメフトの練習後恋人に会いに行くネイサン。クラスに馴染めずに一人で行動するミッシェルは図書室のボランティアに。学校に疎外感を持ってるアレックスとエリックの二人は親に隠れて銃を買う。良からぬことを考える二人は武装し学校に乗り込む。

コロンバイン高校銃乱射事件。
1999年コロラド州で実際に起きた事件を元にプロのキャストは大人のみでリアルに描いた作品。何気ない日常のなかに潜む悲劇をより鮮明に描いたこの作品はキャストの高校生たちは現役であり、高校生たちのリアルなヒエラルキーが伝わってくる。鑑賞後にWikipediaから台本は作られたものに沿ったものではなく、現場で作り上げたことが記されてあり、ガス・ヴァン・サント監督のこだわりが強い作品となっている。いつの時代でも虐めが無くならない限り、このような事件もなくなることはないと思う。生憎、日本では銃を持つ習慣がないからこの事件は起きることは少ないが、それでも他の武器を使っておきた事件は数少ないがある。アメリカの銃社会に問題があるのでは無い、根本の虐めを無くすことが悲劇を無くす方法である。R-15の作品であるが、中高生を対象に虐めによる事件を周知させるのもいいのかなと思う。

題名Elephantに隠された諸説たち。
監督のガス・ヴァン・サント自身もこの題名には色々な意味を持たせてるとされているが、私が一番作品のことを表していると思ったものがElephant in the roomという慣用句に基づいた諸説である。この言葉は、「これは誰の目にも明らかな大きな問題があるのにもかかわらずに、それについて誰も触れようとせずに避けて日常を過ごす」という表現からの引用である。虐めという大きな問題から目を背けた生徒や先生が火種となり、この惨劇を招いたというガス・ヴァン・サント監督からのメッセージのようにも伝わる。

私の近所のTSUTAYAは今月で閉店してしまう。今の家に引っ越ししたのは8月頃で、当初は近くにTSUTAYAがあることは知らずにGoogleマップで知ってからは2~3度レンタルしに行っていた。学生の時にアルバイトをしていたTSUTAYAには思い出もあり、レンタルするならGEOさんよりもTSUTAYAを贔屓してしまう。そんな近所のTSUTAYAが閉店してしまうとなったから、閉店前にせめてもう一度レンタルしようかなと行ったけれど、そこにはもうレンタル出来るDVDは無く、レンタル商品たちが中古として販売されていた。好きな映画を3本だけ買って帰ろと思い棚から映画を選ぶ。知っている映画やこれから観ようと思っていた映画たちを見ると全部買ってしまいたいとすら思ってしまった。けど、厳選して選んだのは十二人の怒れる男とペーパームーン、そしてこのElephantである。Elephant以外は元々見たことがあるお気に入りの映画。敢えて見たことがないElephantを選んだのもこのきっかけがあったからこそである。今回は3本しか買えなかったけど、いつかは棚一面を映画で埋めつくしてマイシアターを作るのが夢である。そして、買うことを断念した映画たちも買い揃えて自分のシアタールームを作りたい。
翔海

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