Kota

エレファントのKotaのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
4.5
Filmarks900本目に再鑑賞。昔は変わった映画だな、としか思わなかったけど今観ると撮影方法が天才的すぎて口が塞がらない。1994年のコロンバイン高校銃乱射事件を扱うにしても、こんな斬新な表現の仕方があるのかと。

主要人物が複数且つ時系列が入れ替わる複雑な場面転換を多用しつつ、シーンにキーとなるものを置くことで観客が混乱することを避ける創りになっている(前シーン最後の印象的なショットから始まる、着ている服が違う、同じセリフを視点を変えて使うなど)。つまり写真を撮ったり、体操服を着替えたりという一件意味のなさそうなシーンも全てこの為の材料になる。また、間に空のシーンやピアノをただ弾くシーンを挟むことで時間軸やこれから起こるべきであろう悲劇を一旦整理する時間をくれる。すれ違う人にバトンが次々に変わるのはリンクレイターの“スラッカー”のような仕組み。そして何より何故、この人達に焦点が当たるのだろうという根本的な疑問が最後になり一気に解決される。

高校生役は全てオーディションで選ばれた素人で、本名を役名として使用。役柄も実際の人物を反映しているらしく、より高校生の“日常”がリアルに映し出される。そこから始まる“非日常”との対比が素晴らしい。正方形で窮屈な画面から溢れ出すような才能が80分に全てが詰め込まれたような至極の作品。いい映画の条件とは役者やCGのクオリティではなく、カメラワークや場面転換にあると証明してくれる。
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