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果しなき欲望のbeachboss114のレビュー・感想・評価

果しなき欲望(1958年製作の映画)
5.0
和製ケイパー映画の傑作。これ、明らかに『マダムと泥棒(1955)』をやりたかったんだろうね。和製だけに少々ドロ臭く仕上がっているが、和製にしては乾いている方。

いかにも訳ありな悪党が一人ずつ駅に降り立つ冒頭からワクワクさせられ、お互いに出し抜こうとする駆け引きや豹変する人間心理にハラハラさせられる。

欲望の果てにある底無しの地獄を象徴した上下の構図。仲間が床下に慌てて隠れたところに、第三者の「上の者は下の連中の気持ちを考えて」なんて呑気な台詞を被せてくる洒落っ気も楽しい。雰囲気は落語。

「欲」についての考察がわざわざ会話で交わされる辺りが日本映画らしい生真面目さであり鬱陶しさなんだけど、押し付けがましさを感じさせず、進行の邪魔にはならない辺りが脚本の巧さ。

「こっちはじっくりと欲に年季を入れて来たんじゃ」という台詞も深いし、最後は物事を俯瞰で捉えていたものが全てをさらっていくというオチも鮮やか。

主人公カップルは客寄せのための添え物(もしくは単なる対比のための「純粋なる者」の象徴)だからいいとして、実際の主役はクセ者揃いで玄人好みの芸達者達。しかも若き日のオールスターキャスト、夢の競演がたまらない。

DVDのチャプター分けがたったの5つという、これまた異常な少なさなんだけど、ちょっとした工夫がなされていて面白い。
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