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アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たちのNMのレビュー・感想・評価

3.3
勝手に、めちゃくちゃな家族が最後にまとまる話だろうと思っていたらとんでもない。とても重い、あまり救いのないストーリー。
ほぼ全編、悲しい。
だが、家族や親戚に悩んでいる人にぜひお薦めしたい。

母リンには、
ディラン、エリオット、ベンの三人の息子、
そして娘のアリスがいる。

長男ディランだけは前夫と住んでおり、この度結婚。
次男エリオットは反抗的態度。以前はもっと暴れていたらしい。内緒のリハビリが必要だった、ということはクスリでもやってしまったか。
三男ベンはまだ幼く大人しい子。

リンは、ディランとベンを車に乗せ実家へ向かう。
娘アリスは三日後に遅れて来るらしい。

冒頭これだけ聞いてもややこしいが、着いた実家は早速大騒ぎが起きている。さらに事件が起きないはずがない。

長男ディランは、陽気な悪ガキという感じ。庭に連れ出してハッパをエリオットにも勧める。これではリハビリなど効果があるはずもない。
エリオットは中毒ではあるが、きっかけは両親の不仲にもあったかも知れない。

式にはリンの前夫ポールも来る。三男ベンは顔も知らない。
別れるには何やらかなりのいざこざがあったようだ。

リンは始めイライラ母さんに見えたが、子供たちを本気で思っていることが分かってくる。
長男の親権をポールに取られたことがどれだけ彼女を苦しめたか。
娘のアリスもまた相当の痛手を負った。

そうなると次男エリオットも、心の傷が体調と関係したように思える。
元々繊細なうえに、苛立ち、癇癪を起こすと手には負えない。自傷的な、現実逃避的な意味でトリップに走るのだろう。

前夫ポールはあらゆることに理解がなく、その新妻もリンを悪者扱い、目の敵にする。ポールとリンの話し合いに首を突っ込み、結婚式も仕切ろうとする。新妻とてディランを育てたという自負があり、強力な存在感を保っているリンは自分の立場を脅かす存在。

新妻の娘たちはもちろん更に不理解。伝言ゲームになってしまい、一方の立場からだけの情報しかないので、彼らはお互いを全く理解できない。さらにそれぞれのメンタルの事情も知る由もない。

リン自身も辛いが、自分よりも、娘アリスを傷つけないよう守る方を優先。
他の子も勿論守りたい。しかし、子どもたちも家族もなかなか理解してくれない。
むしろ一見普通に見えるポール夫妻のほうに理解を示すかのよう。

リンがついに離婚の経緯を告白したときすら誰も同情してくれないのには驚いた。 てっきりそこでリン側に着くのかと思った。
これはあまりに辛い。まるでみんなでリンを責めているよう。

この一家は、お互いを頼れない。絆は一応あるのだが、実はそれぞれが孤立している。

叔母たちだって(誰だって)本当に精神が安定しているとは思えないが、自分は正常でリンがおかしいかのように、いい加減なことをぎゃあぎゃあ言う。
誰が何を言った、いや言ってない、といういざこざがとても多い。

おばあちゃんも、不理解でいつも苛立っているが、最愛の人を看取るという多大なストレスと毎日戦っている。それ以上のストレスはごめんだし、気を紛らわせることしか受け入れたくない。

前夫ポールは、不理解ながらも自分が原因の一つであることは感じ、負い目があるからこそそのことを責められているようにも感じ、解決できるものならしたいとは思っている。だがちょっと力不足であり、その資格もないようだ。

三男ベンは自閉症と診断されたようだが、むしろ一番冷静で達観しているように見える。

こんな状況で始まった結婚式は、リンの立場からするととても肩身の狭い、居心地の悪いもの。
リンだって人生を楽しむ権利があるはずなのに。
そんなにいけないことをしたのだろうか。子どもたちを守りたいだけなのに。味方すらいない。
リンはずっと泣いている。人生でどれだけ泣いたのだろう。

自分も辛いリンが、母としてアリスに言い聞かせる話は良い。
凛とした態度を取ったアリスはかっこよかった。ここはかすかに希望が見えた。

そしてさらに式は大事件が重ねて起こる。

その少し前にエリオットがしていた「無形の絆があの時だけは姿を現した」というあたりの件が伏線となる。
では誰が?誰かが?

途中みせたエリオットのラップも真実を捉えていてなかなか良かった。短時間で芯を捉えている。
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