よーだ育休準備中

サマーウォーズのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

サマーウォーズ(2009年製作の映画)
4.0
夏休み。世界的に影響力のある《仮想空間OZ》のシステム保守管理のバイトをしていた高校生の小磯健二は、憧れの先輩である篠原夏希からの誘いを受けて彼女の実家へ帯同することになる。長野県上田市の大地主、陣内家第16代当主である大おばあ様の誕生祝いの席で、夏希の彼氏役を演じる事になってしまったのだ。個性豊かな親族たちに囲まれ四苦八苦するのも束の間、健二のOZアカウントが何者かに乗っ取られてしまい、ネット社会全体が大混乱に陥る。


◆細田作品は原点こそ至高(異論は認める)

2006年の『時をかける少女』
2009年の『サマーウォーズ』

細田守監督作品の最高峰であり、後続の作品たちはこの二作品には及ばないと思っています。次作である『おおかみこどもの雨と雪』から脚本に細田監督が絡み始めて、さらにその次に制作された『バケモノの子』からは監督・脚本・原作すべて細田守が務めているという事もあり、監督の趣味嗜好が全面に押し出されている《圧》は確かに感じるようになります。ですが、決して後続の作品が悪いというわけではなくて、単純にこの二作品が好きすぎるのです。

当時の映像技術では、昨今の作品ほど映像に深みを出すことはできず、特殊効果の質も量も段違いです。ですが、それさえ古臭いと感じさせない背景美術、活き活きとしたキャラクター達の動き、手に汗握るストーリー展開がとても好みなのです。絶妙な匙加減でほっこりほろりとさせてくれるラストの展開もとても良い。

『ぼくらのウォーゲーム!』でも描かれていた様なネット内部の世界が、今作では《仮想空間》として描かれています。娯楽趣味を楽しんだり、行政手続きが可能であったり、企業がネット上の支店を出したり。当時はまだガラケーで、アバターを使ったネット上のコミュニティがようやく普及し始めた頃だったでしょうか。今でこそメタバースとして映画の中の世界が現実になっている事に技術の進歩も感じられます。


◆細田監督が描く、家族の絆

細田監督といえば、《美しい空》
細田監督といえば、《ケモ…》(ゴホンゴホン)
細田監督といえば、《家族の絆》!

細田守監督作品の醍醐味である《家族の絆》が全面的に描かれているのが今作からです。《親子の絆》を深掘りした作品や、《家族のルーツ》を辿る作品も後に制作されていますが、本作ほど《人と人とのかかわり》を強く描いた作品は無いと思っています。

都会に住んでいる人間が思い描く、理想的な田舎の大家族。典型的というよりむしろ美化された大家族として描かれていますが、フィクション作品ですからそれが良いのです。

ネット社会の混乱が現実世界に波及してしまい、栄おばあちゃんが陣頭指揮を取る様子。親族一同が個々の職場で強みを活かして奮闘する姿は『頑張ってます!』『すごいんです!』感がちょっと過剰でくさくもあるのですが、ネット世界をすさまじい勢いで侵食していく軍事用AIに負けじと現実世界で人と人を繋いでいくおばあちゃんの対比もよかった。

栄おばあちゃんがご逝去されてから、現実的に葬儀の準備を淡々と進める女性陣と、〝弔い合戦だ!〟と盛り上がる男性陣。情報共有がきちんとなされていないことで、強敵を追い詰めておきながら取り逃してしまう詰めの甘さ。頭を無くした人類代表(=陣内家の面々)の統制が取れなくなってバタバタしてしまうものの、おばあちゃんからのメッセージで(拗らせ方がヒドイ侘助を含めて)息を吹き返す。わかりやすく物語が動き始めるのも、おばあちゃんの遺言もグッとくる。


家族同士、手を離さぬように。
人生に、負けないように。

もし、辛い時や苦しい時があっても、いつもと変わらず、家族みんな揃ってご飯を食べること。

一番いけないのは、お腹が空いている事と、一人でいる事だから。


◆大盛り上がりのクライマックス

ネット世界における戦闘のスペシャリスト《キングカズマ》が敗北してしまい、絶望の淵に立たされた陣内家の面々。全世界四億人分のアカウントを奪われ、人類滅亡の刻が迫る。

今作のヒロインがめちゃくちゃ良いところでここ一番の見せ場を作ります。ここからの展開がアツいのなんの!バトルじゃなくてカジノで一発逆転を狙う夏希。《花札》のルール全然わからないのに、なぜか『こいこい!』って熱くなってしまう。知らないゲームなのにここまで熱くなれるのは演出の妙ですね!

…『こいこい』ってどういう意味?

ネット上の脅威に立ち向かう陣内家に対して、世界中のユーザーが手を差し伸べてくれたことで一発逆転を決められる展開。人類のピンチが宙から降ってくることも含めて、まんま『ぼくらのウォーゲーム!』でした。パワーアップしていたのは、サビの後に大サビがあること。『夏希先輩が決めた!』と思った後にも続くヒリヒリしたピンチ。たたみかけるようなクライマックスは何度観ても興奮必至。

『よろしくお願いしまーす!』

壮大なクライマックスの後、今作はエピローグまで素晴らしい。どこまでも理想的で不自然で、とことん小綺麗にまとまりすぎているかもしれませんが、僕はそれが好きなんです。爽やかすぎるロマンスも、誕生日を祝う弔問客も、しがらみに囚われない綺麗すぎる親族の繋がりも、心のどこかでこうありたいと願ってしまう。


*雑記*
みるきぃさんと細田祭二日目!
ご一緒いただきありがとうごさいました!
大好きな作品が、みるきぃさんの手に掛かるとどんなレビューに仕上がるのか。今回もめちゃくちゃ楽しみです。゚+.(・∀・)゚+.゚