こたつむり

サマーウォーズのこたつむりのレビュー・感想・評価

サマーウォーズ(2009年製作の映画)
3.1
セミの鳴き声が聞こえない夏、のような作品。

細田守監督作品初鑑賞でした。
なるほど。とても緻密な作画なのですね。作画から伝わってくるこだわりは素晴らしく、特に都会と田舎で微妙に違う空気を描き分けた手腕は見事の一言。評判が良いのも頷けます。

また、物語のほうは。
“人の繋がり”を真正面から描いた正統派。
やはり、どんな物語でも“人と人が繋がる”瞬間は良いもの…なのですが、正直なところ、何かが物足りないと感じました。

それはキャラクタの厚み。
劇中に“大家族の関係性を一度に覚えられない”というギャグがありますが、皮肉なことに関係性はおろか、名前や性格を把握しなくても物語は成り立ってしまっているのですね。確かに限られた時間で内面を描写するのは難しい話ですが…ほんの少しの工夫で“光らせる”ことも可能だったと思うのです。

また、キャラクタに厚みがないから。
声優さんとの相性の悪さが際立ってしまいました。アニメにおいて“声”は重要な要素。しかし、キャラクタ全体で考えれば、一要素に過ぎません。キャラクタ自体に魅力があれば、相性が悪い“声”すらも“個性”になったと思うのです。

そして、その厚みの無さは。
仮想世界《OZ》と現実世界の“差”を感じることが出来ない要因にも繋がります。ここに“差”を感じることが出来れば、もっと危機感を煽る展開にも出来たでしょうし、クライマックスでも前のめりになれたと思うのです。しかも、仮想世界《OZ》自体が“なんでもあり”ですからね。“制約”なきドラマは盛り上がらないこと必至なのです。

ちなみに、これらは。
“作画”が持つ存在感に頼り過ぎた、というのは穿ち過ぎでありましょうか。

まあ、何はともあれ。
アニメは“作画”が最も重要。
と考えれば総合力は高い作品なのですが…正直なところ、対象年齢が違ったのでしょう。もしも、十代の頃に観ていたら、もっと違った感慨があったと思います。歳を取ると“感情移入”するためのハードルが高くなるのですよ。だから、大人向けの物語は“現実感”を重要視するのです。

作画は“現実感”たっぷりだったのですが…。
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