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ミリオンダラー・ベイビーのmogのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
2.5
ストーリーも小道具も演出も定型的で記号的。孤独で偏屈な老人。ゲール語の本。毎週戻ってくる娘への手紙。ダイナーでアルバイトしながらボクサーを夢見る女性。孤独な2人の出会い。サクセス。無理解で想像力のない家族への報われない報恩。決別。理不尽で不幸なアクシデント。最期に明かすモクシュラの意味。尊厳死。そういういかにもな要素がイーストウッド作品特有の過剰に分かりやすいかつ不正確な演出でコーティングされてもう大変なことに。
特にボクシングの試合のシーンは酷い。ダウンしてるやつを殴りたおしてライセンス剥奪されないチャンピオンなんかいるかアホか。

女性ボクサーっていうのは設定レベルではひねりかもしれないけどやっぱり非常に記号的で全く物語に入り込めない。音楽の入り方も実にあざとくてくどくどしくて辟易してくる。ただし演者の演技は素晴らしいから結構感情はゆさぶられる。それが一層たちが悪い。出来の悪い作り物めいた胸糞展開で感情が揺さぶられるとなんだか操作されているようですこぶる不愉快。

しかしモーガン・フリーマンの語りがもつ力は底知れないものがある。どんな話でもぐいぐい運んでいく。特に終盤のロッカールームでの2人の会話。毎日人は死んでる。床掃除や皿洗いをしながら。自分の人生を後悔しながら死んでいく。やり切ったと思いながら死んで行けるのは幸せだ。みたいな話。別にこう書いてみるとこれも定型的なメッセージの域を全く出ないけれど、全編作り物めいて感じられたストーリーの中でこの部分はなぜか強烈な説得力を持って心に響いた。

主演女優賞はまあ順当。助演男優賞もわかる。監督賞と作品賞は気が狂ったのかと思う。イーストウッドって下手すると教科書みたいな映画の撮り方って認識されてそうだけど完全に悪い見本でしかない。
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