ぎー

ミリオンダラー・ベイビーのぎーのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
5.0
ただの名作。アベンジャーズやタイタニックとかとはちょっと違う意味で、映画中の映画。芸術家でもないのにこんなこと言っていいのか分からないけど、ある意味設定自体は物凄く映画らしい映画。不器用だが確固たる技術を持った職人肌の老人トレーナーのフランキーと、出自も家庭環境も経済状況も恵まれないがひたむきに自分の夢の実現のために努力を惜しまず才能もある女子ボクサーのマギー。その2人のサクセスストーリーと悲劇、愛情の深化を描いている。ある意味滅茶苦茶出来すぎているのに観客はそれを全く感じない。恐らく世界中の視聴者がフランキーと共にその選択に苦悩し、ベルトをかけた舞台では対戦相手ビリーの汚い手口に憤りマギーを応援しただろう。個人的には、アイリッシュであり敬虔なカトリック教徒であるフランキーが尊厳死に向き合う姿勢は、副次的なテーマに過ぎないと感じた。人の幸せとは何か。長く生きることなのか。真に人を想うとは何か。その力を認めて命を危険に晒すが、大きな成功を掴める場に送り出すことなのか。愛情とは何か。相手を傷つけないことを言い、望むことを言い喜ばせることなのか。世界中の人に人生とは何なのか問いかける作品。賛否両論あるのかもしれないが、人々に深い印象を与える一作であることは間違いない。そして、このあまりにも映画らしい設定であるうえに、映画らしいテーマだが、鑑賞している人はどんどんひきこまれていく。その映画としての完成度はとてつもなかった。哀愁を帯びているが温かみのあるアコースティックギターの旋律、役者陣の熱演、絶妙にストーリーを構築した脚本、それらをまとめ上げた監督や演出。決して派手な映画ではないが、完璧な映画だったと思う。クリント・イーストウッドやモーガン・フリーマンはもはや名優たる所以を示していると言った印象だったが、マギーを演じたヒラリー・スワンクの魂のこもった演技はすごかった。若い時に観て映画を大好きになったきっかけの一つの作品。時が経っても感じるところはとても大きかった。
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