たけちゃん

ミリオンダラー・ベイビーのたけちゃんのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
4.5
ボクシングは"尊厳"のスポーツだ!


クリント・イーストウッド監督 2004年製作
主演ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン


勝手にお知らせシリーズ「今日は何の日」
本日、6月1日はモーガン・フリーマンの83歳のお誕生日。昨日に引き続きクリント・イーストウッド監督作品で祝いたいと思います\(^o^)/


【モーガン・フリーマン】
1937年6月1日、テネシー州のメンフィスで生まれました。

メンフィスって、綿花の産地で黒人奴隷の多い地域で、街の半分以上が黒人という街です。また、公民権運動が激しかった土地の一つですし、あのキング牧師が暗殺された街でもあります。

きっと様々な思いを抱いてきたと思うんだけど、モーガン・フリーマンは黒人差別ということを論じること自体が問題をより悪くしていると考えているようで、黒人解放のコミュニティには参加しないと決めているそう。
すごく好きなエピソードに、「映画『ディープ・インパクト』で黒人の大統領を演じられましたね」とインタビュアーに言われた時「私は黒人で、黒人を演じているわけではない」と答えたというのがあります。これって、モーガン・フリーマンの考え方が端的に出た逸話だと思うんですよね。論じたその時から、既に差別は始まっている。だから、語ってはいけないんだ、とね。

映画「ドリーム」の中で、白人女性が黒人に対して「私はあなたたちを特別だとは思っていない……」みたいな話をするシーンがありましたが、そう言っていること自体が既に差別意識だと気づいてないんですよね。根深いです。






さて、映画です。
僕はこの映画が嫌いです……
しかし、クリント・イーストウッド監督作で1番高くスコアを付けているのも、今作です。
スクリーンから目が離せない。
でも、その理由を書くとネタバレになるなぁ……。
出来れば、未見の方は、このままレビューを読まずに、映画を手にしてみてね。










この映画を初めて観た時の衝撃は、なかなか言葉で言い表せない。例えになってないけど「Uボート」を初めて観た時の絶望感に似てる。

途中までは、まるでロッキーのように、ボクシングによって世界の底辺から這い上がる話。
貧乏で、13歳からウェートレスで稼いでいるマギー、既に31歳。コツコツ貯めたお金でジムの費用を払い、用具を買う。

そして、年老いてはいるが名トレーナーのフランキー。過去の失敗を悔いて、23年間、教会のミサに通い、生きている。マギーは彼にコーチを頼むが、剣もほろろに断られる。

しかし、諦めないマギーの真摯な姿に少しずつ心を許し、コーチをすることに……。マギーはそこからチャンプへの階段を登り始める。


ここまでの展開って、昨日レビューした「グラン・トリノ」とも同じよね。ウォルトがタオを世話する姿にまんま重なる。
ほんと、このフランキーがトレーナーの仕事を引退したその後の姿がウォルトになったよう。

昨日観たこともあり、気持ちがどんどん入ってくわ。

でも。1時間を過ぎた頃からちょっと変わってきます。
そう、実家の母に家を買うくだりね。
マギーの生きる現実を知らされます。

思い描いていた姿と現実とのギャップ。
ほんと、切なすぎる!
なんて母親だよ!




そして、今作はヒラリー・スワンクに出会った映画でもあります。今作では全然美しくないでしょ?田舎者で、貧乏で。
でも、本当はとても素敵な女優です。
そう、本当に素晴らしい役作り。
「ボーイズ・ドント・クライ」も凄かったけど、今作も素晴らしいです。
また、フランキーに師事して、体がどんどん出来上がっていく姿が、まぁすごい。
腕とか肩とかの張りが半端ない!

そして、後半。
涙無しでは観られない。
あの目の演技、ほんと凄い。
主演女優賞以外の選択肢、ない。



今日の主役、モーガン・フリーマン演じるエディ・"スクラップ・アイアン"・デュプリスは今作のストーリー・テラー。
映画の主役はヒラリー演じるマギーと、彼女のトレーナー、クリント・イーストウッドが演じるフランキーです。
でも、モーガン・フリーマンも今作でアカデミー賞助演男優賞を受賞。その理由は観ると分かります。
ナレーションにも定評があるモーガン・フリーマンですが、本当に沁みる。
そして、今作の中で1番語りたいことは、このエディの口を通して語られるんですよね。
「生きるとは」
「幸せな人生とは」
正論では語りえないこと、それが胸に突き刺さります。
それにしても、「誰もが一度は負ける」はいい台詞だなぁ( ˘ ˘ )ウンウン





僕が今作を嫌いという理由。
だって辛いんだもん。
それは、当然ラストの選択にあるんですが、でも、それしかないと僕も思ってしまうの。
それが人生さ、と。

彼女を"生かすこと" は "死なすこと"。
甘い幻想を抱かせない現実。

娯楽ファンタジーの世界に生きていたい僕にとっては、受け入れ難いもの。でも、清濁あわせ持つ人間にとって、綺麗事だけではない世界があるよね。
改めてそれを突きつけられる……。
はぁ……、本当にこの映画、嫌い😂😂😂
個人的にはクリント・イーストウッド監督の最高傑作は、本作だと思っています。



モーガン・フリーマンの素晴らしい語りと素晴らしい映画に感謝を込めて。
モーガン、お誕生日おめでとうございます🎊🎊🎊🎊