茜

潜行者の茜のレビュー・感想・評価

潜行者(1947年製作の映画)
3.5
この時代に一人称視点の映像を取り入れるなんて凄い!
とか言ったら当時の人達に「ナメんな!」って怒られそうだけど、本当に革新的だと思った。
最近ではちっとも珍しくないPOVだけど、この作品はそれらの先駆けでもあるし、スピーディーにパッと切り替わる視点のキレが良くてかっこいい。

ハンフリー・ボガートとローレン・バコールという実際の夫婦の共演作。
とは言え一人称を取り入れている事もあり、主人公のハンフリー・ボガードがその姿をカメラの前に表す時間は意外と短い。
その分、ローレン・バコールのまるで絵に描いたような美しさが画面を存分に彩る。
当時の上質でお洒落なファッションも素敵だし、20代前半とは思えないローレンの大人っぽさに見惚れてしまう。

お話はあまりにもトントン拍子で、ちと都合が良すぎるかなと思わなくもない…。
けど、1940年代の映画を殆ど観た事がない自分にとっては、それだけでも新鮮に感じられて面白かったな。
妻殺しの罪を着せられ服役た男が脱獄、整形手術で顔を変え、更なる殺しの罪を被せられながらも真犯人を探っていくサスペンス。
男に整形手術を施す医師から漂う怪しい雰囲気も良いし、手術中の男の不安を表すように流れる走馬灯っぽい映像も気味悪くて好き。

先にも書いたようにお話は本当スカスカでご都合主義なのだけど、美しくかっこいいモノクロ映像が堪能出来ただけでも自分は充分満足。
茜