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死刑台のメロディのan0nym0usのレビュー・感想・評価

死刑台のメロディ(1971年製作の映画)
3.8
今から1世紀近く前…多民族国家であるアメリカが、多くの主義思想が混在する混沌の最中にあった時代。

アメリカ司法の歴史的汚点と云われるサッコ・ヴァンゼッティ事件を描いた作品。

知るべきこと。
知らないこと。
山ほどある。

知ることができて良かった。

イタリア系移民たちが迫害され、並んで歩く姿は…まるで葬送の列にも思えた。
この物語は、そんな冒頭から始まる。

国家権力の独善によって、罪無き二人の男が死刑に処された冤罪事件…

今はまだ感情が沸騰している。
刺々しい言葉が浮かんでくる。

虚像を現実にして、真実に蓋をする。

この絶望的な愚かしさ。
それが私たちと同じ人間によって、起きているということが…とても苦々しい。

時代と、思想と、経済情勢…拭い去れない不安感もあったんでしょう。でも、その背景を考えたとしても、許されざる愚行。

人の中にある残酷さを、見せつけられる。
世界を地獄に変貌させる人間の醜さ。

…本当に人は弱いね。

こういう作品を観ると…
いつも反射に苦しむ事になる。

もうすぐ100年が経とうとしていても、根本が変わっていると…私は思えない。

取り繕い方が、巧妙になっただけ。
見えないように、隠しているだけ。

人を不幸せにすれば…世界が不幸になる。
自分の内側にある炎が、自らを焼いてる。

これは世界の縮図。
平穏な日々の裏側に、今もある病巣。

ターミナルケアになる前に、見つめなおさなきゃいけませんね。
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