R

レスラーのRのレビュー・感想・評価

レスラー(2008年製作の映画)
5.0
ちゃんと見るのは4回目。なんたる苦々しさ! かつてプロレス界のスーパースターだったランディは、レスラーとして生きつづけるために、妻も娘も捨てた。けれど、いまや爺さん一歩手前の彼は、地方の小さなリングで、細々と週末に地味なレスリングをしてるだけ。平日はスーパーでバイトして、トレーラーハウスでひとりきりの生活を送ってる。そんなランディはある日、試合のあと心臓発作をおこし、もはやレスリングを続けられない体になってしまう。ずんぐりした巨体に、ブリーチしたブロンドのロン毛、補聴器、日焼けマシーンで焼けたボディ、いかつい整形顔に、少年のような瞳、老眼鏡。彼にまつわるすべてが、コミカルさと深い哀愁を漂わせてて、これを演じきったミッキーロークの存在感、すごいわ。手持ちカメラで追いかける、ランディのゴツい後ろ姿からにじみ出る愁いを、これほどまでリアルに感じさせられるのは、ロークしかいないのでは。リングに立てなくなった彼は、ふと思い立って、自分の捨てた娘との関係を何とか修繕するため、誕生日にプレゼントを贈ろうとするんやけど、ストリップクラブで働いてる女キャシディに、選ぶの手伝ってくれとお願いする。客との店外での関係は禁止されてれる、と一旦は断るキャシディだが、つい、一度だけよ、とオッケーを出してまう。キャシディはすごい美人だけど、いい年のおばさんで、店に来てた若い子からババア!と罵られることもある。もう落ち目で、キャリアを終わらせる時なのかもしれない。だからランディのすがたに思わず共感してしまうんだね。このへんのやりとりがものすご胸にぎゅーーーっと来て、苦しくなってくる。そのあとやってくる娘との涙の会話シーン。痛い痛い痛い……そこからストーリーは、予想とは違った方向に進み始める。そりゃ監督知ってりゃ単純なエンディングな訳ないのは分かってるが、これはキツい。最後のシーンは、痛々しさとキーーーーーンとドキドキで心臓が飛び出そうになった!そして、悲しくも潔い、とんでもなくすばらしいエンディング! 号泣ですわ。号泣しながらスタンディングオベーション。ホントにすばらしい。でもええやん。これもひとつの生き方だ。自分が本当はしたかったことを何もできずに終わる人生より遥かにいい人生だ! リングの上でしか生きられないランディ! サイコーーーー! 見るたびに好き度が上がっていく、大大大傑作!
R

R