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レスラーのKotaのレビュー・感想・評価

レスラー(2008年製作の映画)
4.2
“あそこが俺の居場所なんだ。”

かつて栄光を手にしたプロレスラー“ザ・ラム”ことランディ(ミッキー・ローク)の引退間際の20年後を描く。おススメされて見たけどめっちゃ良かった。普段プロレス物は好まないんだけど、この映画が描くのは一人の男がぶつかる現実。監督は“レクイエムフォードリーム”や“ブラックスワン”など衝撃のバッドエンドで有名なダーレン・アロノフスキー。

勝利の新聞記事が歓声と実況をバックに流れるオープニングからの、寂れた控え室で座り込むランディを写す最初のショットの対比でこの映画のテーマを一瞬で悟り、バイト先のスーパーの惣菜コーナーに行くまでの道にかつての歓声を重ねるワンカットで泣いてしまった。役者に多くを語らせる事なくここまで感情移入させれるのが天才的だなと。

需要が無くなっている事を知りながらポールダンサーを続けるキャシディー(マリサ・トメイ)や、親の愛を受けられなかったからこそ拒絶してしまうステファニー(エヴァン・レイチェルウッド)の繊細な演技が痛い程の現実を醸し出し、それと対比されるランディの非現実への逃避が浮き彫りになる。でも最後まで“カッコよかった”のは誰かを考えれば、これはハッピーエンドと信じたい。
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