俺の引退はファンが決める
「カリフォルニアドールズ」には乗れなかったプロレス門外漢だが、これは燃えた。落ち目のミッキーロークと主人公ランディの生き様が重なる傑作。
現実(俳優ミッキーロークが置かれた境遇)と虚構(レスラー・ランディのそれ)が、ないまぜになる不思議な味わい。これがそのままプロレスという競技の特異性とも一致する。
スポーツ映画の多くは、そのカタルシスを勝敗の行方に持ってくる。前述の「カリフォルニアドールズ」とて例外ではない。しかし本作は序盤で、レスラーたちが(勝敗ではなく)いかにファンを喜ばせるか?その為に綿密に打ち合わせ(笑)、また己の肉体をどれだけ削っているのかも丹念に描写する。彼らにとって勝敗よりもファンが全てなのだ。これにはプロレス門外漢の私も心を掴まれた。確かにこれは「八百長」と呼ぶべきではない。プロレスは「プロレス」(という独自のエンタメなのだ)という認識を共有する。
引退が近い哀愁をそれほど強調せず、淡々とランディの日常を切り取る手持ちカメラの映像がいい。スプリングスティーンの書下ろし主題歌も心に残る。