みかんぼうや

インテリアのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

インテリア(1978年製作の映画)
3.6
【ベルイマンの世界観と思想を翻訳してくれたようなウディ・アレンのベルイマンオマージュである本作を通じて、ベルイマンの芸術性に改めて気づかされる】

本作を観る直前に観たイングマール・ベルイマンの「叫びとささやき」が久しぶりに極端に自分と合わない作品だったので、ちょっと気分を変えて、もう少しポップな作品を観ようと思ってフィル友さんのお薦めでマイリスト登録していた本作をチョイス。あまり下調べせずでしたが、ウディ・アレン作はエンタメ性ありでそこそこポップな作品も多いし(うんちく強めだけど)、タイトルからもなんとなくアットホームな作品かな~、なんて思っていました。

観始めて10分・・・ん?なんか思っていた感じと違うぞ。出てくる登場人物がことごとく神経質でみんなイライラしている。そして、主人公は3人姉妹で姉妹間の関係は嫉妬やコンプレックスでいびつな関係に・・・あれ?これ、まさに「叫びとささやき」と同じような設定じゃん!

気になってちょっと調べたところ、なんと本作、ウディ・アレンが敬愛するベイルマンを意識し、ベイルマンへのオマージュ的に作った映画だそうで!ベイルマンから一旦頭を切り替えようとしたら、ベイルマンの呪縛(決して嫌いではなく好きな作品もあるんですけどね)に追いかけられるという。全く狙ってなかったので本当にビックリ!こんな偶然もあるのですね!

で、こちらの作品はどうだったかというと、私の単純な感覚には、本作のほうがストレートで素直に面白かったです。

比較的裕福な家の三姉妹という家族構成、後半に登場するパールという人物の鮮烈な赤色のドレス、次女がしたためる日記の演出などは、まさに「叫びとささやき」を想起させるものですが(どこまで意図的であったかは分かりませんが)、細かい話の内容や演出などはもちろん違います。

ただ、根底にあるテーマは、やはり姉妹間のいびつな関係性をベースとした家族という概念への懐疑性で、その点で言うと、本作はストーリーは違えど、ウディ・アレンがベルイマンの世界観や思想を、劇中の分かりやすいイベントと登場人物たちが発するたくさんの言葉を通じて、私のような人間でも分かるように、翻訳してくれたような作品だと思いました。

だから、姉妹間の嫉妬とコンプレックスの原因等がより分かりやすい台詞という形で伝わってきましたし、夫婦間のトラブルなどの目に見えるイベントを通じて、家族の在り方への問題提起についてもシンプルに伝わってきました。あとは、「叫びとささやき」に比べると、全体的に台詞も多くテンポも良かったので、ウディ・アレン作品の中では淡々としているようにも見えましたが、ダラダラとせず観ていて飽きなかったというのもあります。

一方、本作を観て改めて気づかされたことは、ベルイマンの映像の芸術性と表現力の高さ。「叫びとささやき」を観た時は、レビューもかなり批判的だったとおり、あまりにも作品に入り込めず芸術性の部分を感じる余裕さえなかったのですが、本作を観終わった後に、「やはりベルイマンの映像表現力や演出の独自性は凄かった!」と、皮肉にもこのタイミングで思ってしまいました。

本作はストーリーと言葉で、ベルイマンは概念と映像の芸術性の中で、家族や姉妹間の根底にある似たような鬱屈とした思いを表現しているようで、結果として2人の監督の表現手法を対比することができ、この2本を立て続けに観られて良かったです。
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