逃げるし恥だし役立たず

レモ/第1の挑戦の逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

レモ/第1の挑戦(1985年製作の映画)
2.5
東洋古武術である韓国の秘術シナンジュを体得した政府機関エージェントが強大な軍事産業の陰謀と闘う姿を描いたアクション。リチャード・サピアーとウォーレン・マーフィー原作のベストセラー・シリーズ『ザ・デストロイヤー』シリーズのキャラクターを基に映画化。
殉職したはずのニューヨーク市警の警官(フレッド・ウォード)が、ハロルド・スミス(ウィルフォード・ブリムリー)率いる大統領直轄の秘密組織にスカウトされ、顔面を整形された上にレモ・ウィリアムス(フレッド・ウォード)と云う法を超えて強大な悪を秘かに抹殺する暗殺組織のヒットマンとして生まれ変わる。朝鮮の古武術シナンジュの達人チウン(ジョエル・グレイ)の元で日夜訓練に明け暮れる中、軍需産業で巨万の富を築いたジョージ・グローヴ(チャールズ・シオッフィ) とワトソン将軍(ジョージ・コー)の陰謀阻止と云う初任務を遂行すると云うアクション・コメディ。(シリアスなサスペンスを期待して観てしまった…)
冴えない白人暗殺者とインチキ東洋人師匠のコミカルに振り切った作風で、矢鱈にメロドラマに拘るジョエル・グレイと"I ♡ N.Y"のエプロン姿のフレッド・ウォード、ゲームの景品の大きなぬいぐるみを二人で抱えて歩いてる姿など二人の師弟愛はシュール其の物で、トラウマ級に強い印象が残る水上歩行・アナログ的だが『マトリックス』より先行していた弾丸よけ・高所恐怖症の克服・指一本で相手を制圧できたりとアホらしい体術にいい加減な設定と、全編に亘ってチャチでインチキ臭さが溢れているのだが、其れも魅力の一つで、端から本格アクションや重厚なサスペンスなんか期待せず観れば、突っ込み処満載の荒唐無稽な物語もB級アクションの珍作として妙に楽しく感じられる。義手の同僚エージェントのマクレリー(J・A・プレストン)との別れに悲壮感はなく、ヒロインのレイナー・フレミング少佐(ケイト・マルグレー)とのロマンスもなく淡々と展開される味気のないストーリーに、派手なテーマ曲の割に内容の方は何を狙ったのか手堅く地味に収まっているのが何とも勿体無く感じるが、CG技術など確立されていない時代に、ジョエル・グレイの素晴らしいメイキャップ、火薬を使った派手な爆発シーン、改装中の本物の自由の女神でのスタントマン大活躍の大迫力のアクションシーンは『007シリーズ』を意識した作品だけに見せ場はある。
西洋人の間違いっぱなしの誇張した東洋の神秘やシナンジュの独自の世界観があって、アメコミ好きには流行るんではと思いながら、第二、第三の挑戦を待っていたが、本編の『第一の挑戦』で終わってしまった。まあシルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーやメル・ギブソンやピーター・ウェラー(ロボコップ)達の映画が目白押しとなる為、公開された時期が不幸だったのだろう。
良い味出している師匠チウン(ジョエル・グレイ)の韓国人が世界最高民族とか全ての武術の源流が朝鮮の新安州村(シナンジュ=Sinanju)でナポレオンやチンギス・ハンを暗殺したとか鼻に付く韓国推しには冗談か本気か分からず失笑モノである。
殉職させて整形するなんて面倒な事をせずに、潜入先にいた、やたらに頭が良くて芸達者なワンちゃんをエージェントにすればと思うのだが…