ほーりー

ニュールンベルグ裁判のほーりーのレビュー・感想・評価

ニュールンベルグ裁判(1961年製作の映画)
4.3
タイトル通り、ナチスの戦犯を裁いたニュルンベルク軍事裁判を題材にした作品…といっても本作は戦争指導者たちの審判ではなく、その後の細々とした裁判のひとつ、ナチスに協力した裁判官たちの審判を描いている。

監督は社会派映画の名匠スタンリー・クレイマー。出演は判事スペンサー・トレイシー、被告バート・ランカスター、検事リチャード・ウィドマーク、弁護人マクシミリアン・シェル、傍聴人マレーネ・ディートリッヒ、証人がジュディ・ガーランドにモンゴメリー・クリフト、書記官ウィリアム・シャトナーといった文字通り豪華キャスト!

東京裁判然り、勝った国が負けた国を裁くこと自体に無理があるのだが、ナチスが作った悪法を忠実に従って判決を下したり、ユダヤ人連行許可の司法文書を出した(しかも当人たちはアウシュヴィッツの虐殺を知らなかった)だけの被告たちを果たして罪に問えるのかというのが、本作の大きな争点となっている。

好むと好まざるとにかかわらず、ナチスという絶対悪に協力した時点で彼らはOUTであると言えばそれまで。
では上記の論理でいえば、ヒトラーに熱狂したドイツ国民は全員戦犯か? ヒトラー台頭を許したソ連やイギリスも同じく戦犯か? 欧州の混乱に乗じて株価で儲けたアメリカも戦犯か? ということにもなってしまう。

さらには来る冷戦を前にして、ドイツ国民の感情を逆撫でしないよう減刑を望む連合国側の思惑もあり、当然審議は混迷を極める。

また、高度な文明や歴史のある国家が何故あのような凶行を行ってしまったのかという最大の疑問についても、この映画は真正面からぶつかっている。

トレイシー扮する判事は、この国で一体何が起こったのか、法廷のみならず、廃墟となった町に自ら出掛けてこの目で確かめてみようとする。そして思慮深い現地の人々と接触すればするほど、益々その疑問が深まるばかりなのである。

圧倒的な情報量が多い作品ゆえ、尺が3時間に及ぶのにもかかわらず、最後まで目が離せない骨太の社会派作品である。
ほーりー

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