キャッチ30

ニュールンベルグ裁判のキャッチ30のレビュー・感想・評価

ニュールンベルグ裁判(1961年製作の映画)
4.3
第二次世界大戦終結後、ドイツのニュールンベルグにてナチスの戦争犯罪を裁く国際軍事裁判が開かれた。俗にニュールンベルグ裁判と呼ばれる。ただし、この裁判には続きがある。米軍は先の裁判で裁かれなかったナチス戦犯を裁くために12の軍事裁判を開いた。名称はニュールンベルグ継続裁判である。

映画で描かれている裁判はこの継続裁判を基にしている。被告はエルンスト・ヤニングら4人の法律家である。地裁判事であるヘイウッドが裁判長に、米陸軍のローソンが検察側に、そして、ロルフが弁護側に任命され、この裁判に挑む。

この映画で問われているのは戦争責任の所在である。ローソンは責任は当事者であるナチスにあると言うが、ロルフはナチスを台頭させた周辺国やドイツ国民にも責任は無いのかと弁を振るう。特に、被告の代表であるヤニングはドイツ国内で著名な法学者であり、ヒトラーに批判的であった為、論争は複雑になっていく。

もう一つの着眼点は、ヘイウッドと未亡人のベルトホルト夫人に戦勝国側と敗戦国側の役目を負わせていることだろう。ベルトホルト夫人は夫が米国軍に戦犯として処刑された過去をもっている。それ以来、米国人に憎しみを抱いていたがそれだけでは生きていけないことを悟っている。これは当時のドイツ国民の心情ではないだろうか。

監督のスタンリー・クレイマーは法廷劇を通して、第三帝国を批判的に描いている。そう考えると、ホロコーストの記録映像や断種法の被害者の証言も効果的だ。
ベテラン俳優たちのいぶし銀の演技も良い。特に、スペンサー・トレイシーとバート・ランカスターがいい味を出している。