りっく

ニュールンベルグ裁判のりっくのレビュー・感想・評価

ニュールンベルグ裁判(1961年製作の映画)
4.2
社会の不安定さに耐えきれず、その原因の1つとなる敵を攻撃する強力な指導者を求め、身を委ねてしまう人間の弱さ。従来の戦争犯罪と向き合うことは、自らの心と向き合うことであると教えてくれる。

司法大臣として第三帝国の憲法起草に関わったエルンストヤニングの弁護を務める彼の教え子であるハンスロルフ。ナチスの法に則って断種手術や優生思想を正当化しようと責め立てるロルフはナチスの亡霊のように見えてくる。

一方で罪状認否で無罪を主張する被告たちは戦勝国が敗戦国を裁くこの裁判自体認めていない。だが、ヤニングはナチス裁判と同じことを繰り返すロルフを叱責し、自身が法の元に犯した、真実をあえて見なかった罪を告白する。

彼と裁判長のやりとりがラストシーンだが、直接的には関与していない歴史的大事件を、どこまで関知していたかという焦点の輪郭がおぼろげなまま、同じ法のもとで生きる人間として尊敬と畏怖の関係性で結ばれる。刑務所の長い廊下の先には、一体何が残るのだろうか。
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