これぞ真の脱獄映画なのかも。
バルタザールやムシェットを先に履修してたので本当に”風は己の望むところに吹く”事にビックリしたけど『神に万事頼るのは安易だ』という作中の台詞はブレッソン流ジョークかなと思ってしまった(原作にあるのかな)。
あるレジスタンスの男の脱獄の一部始終を無駄な要素を全て省いて描くストイックさが逆に斬新。主人公のモノローグも行動描写のみで心情はほぼ語られず彼の情報は観客には開示されない。
ブレッソンはこれを製作中にドキュメンタリーを作りたかったと言ってたらしく納得。
繰り返しのパターンを巧みに用いて最後でそれを破壊する構成がさすが。
「掏摸」と同様手元のクローズアップを多用している。スプーンの柄の輝きに緊張感があった。
レジスタンスの精神の高貴さを謳う映画という記述もみたけどそれが主軸ではなく、求めよされば与えられんという希望を失わない1人の男の話にみえた。強く望んで行動を起こせば道は切り開かれる。まあもちろん無理な時もある。