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ザ・ロイヤル・テネンバウムズのRenのレビュー・感想・評価

3.5
ウェス・アンダーソンの中でもかなり好きなほう。近作に比べてロケ撮影多めだけど、観やすさと美しさ・可愛らしさの同居という意味では最高なのではと感じてしまいます。

3人の天才を子に持つものの妻と別離、家族とも疎遠になったロイヤル・テネンバウム。彼が末期がんの宣告を受け、再び家族が集結したことでさらに物語が進んでいきます。この構造はさながら『サニー 永遠の仲間たち』。
しょーもない父親を筆頭に、クセしかない家族を掬い上げる群像劇。ちゃんとメインキャスト皆んなにフォーカスが当たるのが良かったです。一つひとつのエピソードは深掘りしていけばかなりシリアスになりかねないところですが、最終的にスッキリした後味に繋がるのはやはり小気味良い会話のリズムとお洒落な画作りの賜物(部屋の内装から衣装から全部眼福)。犬猿の父子、敵わない身内の恋。不器用な人達の失敗と葛藤と成長と変化が、笑い飛ばせも悲観的過ぎて泣けもしない絶妙な温度感で観られました。
ラストのアクションはもうしっちゃかめっちゃかで普通に楽しい。「新しい○○だよ」だけは私の中でNGだったけど。

あとこの監督、ポップな中に突然ギャッとなるような描写入れてくるの好きなんですか?洗面所のリッチーの○○○○のシーンとか。特に今作のイーライの車がアレするところや、『グランド・ブダペスト・ホテル』の猫ポイッもそうですが、急に許せない展開を突っ込んでくるのやめてほしい。笑

唐突に訪れるエピローグには面食らうものの、紆余曲折を経てテネンバウム家が辿り着いた在り方の回答としてこの上なく分かりやすいものになっているので良いのだと思います。
家族だからいつも一緒に居よう、辛いときこそ支え合おう、というのではなくて、ピンチの局面でも寄り添ってくれたり弱いところを曝け出しても受け入れてくれたりする人のことを逆説的に家族と呼びたいと、思ったりしました。

不器用な人しかいない家族が、不器用ながら彼らなりの形を探す話として『リトル・ミス・サンシャイン』と重なるところのある作品だと思います。このテの家族映画、もっと観たい。おすすめありましたら是非教えていただけると嬉しいです。
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