竜平

ザ・ロイヤル・テネンバウムズの竜平のレビュー・感想・評価

3.8
かつての秀才一家「テネンバウム家」とその取り巻きの現在、拗れた家族の再会と再生の様子を描く。ウェス・アンダーソンによるちょっぴりシュールなファミリードラマ。

登場人物の諸々の説明から始まるオープニングが妙なワクワク感を誘う。ジーン・ハックマン扮する父ロイヤルがわりとロクデナシ、で彼が発端となっての家族間の確執というのを独特のゆるさとどこか微笑ましい世界観で映し出していく。それぞれにある父への想いや感情、抱えてるものがあるわけだけど、それらがふと交わっては衝突して、とくに解決もしないまま、また拗れて、みたいなのを淡々と延々と描写していく、これがなんともシュール。でサラッと描くけどじつはドロドロしてるあたりおもしろい。カメラワークやらこの雰囲気やら、そしてストーリーまで、これぞまさにウェス・アンダーソン作品という感じなんだよなと。なんだかクセになるってな人が大勢いるはず。後のウェス・アンダーソン作品ではこの「節」というのが更に顕著になっていくわけだけど、とりあえず今作と後の『ダージリン急行』をウェス・アンダーソン作品の入門編としておきたい、かな。

いやしかしキャストの豪華なこと。展開とかまったりしていながらもなんやかんや飽きずに見れてしまうのはやっぱり登場人物の存在感なのかなと。めずらしい気がするグレてるグウィネス・パルトロウよ。まぁ問題や事件的なことはしっかり起きてるのに物静かというか平坦というか、起伏の少ない感じは好みの分かれるところかも、てかそもそも彼の作品って一貫してそれ、ハマる人にはハマる的な。エピソードにはなんともほっこり。で軽めのノリの中にもじつは人の成長という部分を垣間見ることができたり。人間そんないきなりガラッと変われないよねーなんて。

めちゃくちゃおもしろい、とか、見終わった後に何か深いものを受け取れる、とか、そーゆーわけでは決してないんだけども、キャストやらこのゆるさやらでふと見たくなってしまう、そんで見終わった後に妙に気持ちいい余韻が残る一本。
竜平

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