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ミッションのKSatのレビュー・感想・評価

ミッション(1986年製作の映画)
3.7
めちゃくちゃ美しくして気狂いを取り除いたヘルツォーク映画って感じ。クリス・メンゲスの琥珀色と緑が印象的な画面も、モリコーネのスコアもマジで美しい。

18世紀の南米を舞台に、グアラニー族に布教するイエズス会の宣教師と、彼らを排除して支配を進めようとするポルトガル・スペイン両軍との闘いを描いた描いた映画で、必然的に宣教師たちが英雄ないし良心、征服者たるポルトガル軍・スペイン軍は悪として描かれている。

しかし、そもそも異国の地に元から住む先住民を「未開の部族」と決めつけて良心の名の元に勝手に踏み込んでテメエの考えたおとぎ話と矛盾だらけの道徳心を押し付ける宣教師どもも、十分都合が良すぎるし何様なんだろうか、と。

こう考えてしまうあたり、自分はやはりキリスト教がとうとう大して広まらないまま発展し、八百万の神とかいって見えないもの・心の中にあるような抽象的な無数のものに祈りというかほんわかと感謝しながら生きる我らが島国JAPANの人間だな、と思うし、そもそも21世紀の今「先住民=未開の部族・ケダモノ」と本気で考えてる方が遅れているよ。その辺のことは20世紀後半にレヴィ=ストロースあたりが論破したはずだ。

とはいえ、音楽を活かしてグアラニー族と打ち解けていくジェレミー・アイアンズは良いし、何より自分の過ちを本気で反省して涙を流すデ・ニーロは凄く素敵。こんな純粋な演技もできるんだな、と改めて感心した。
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