horahuki

亡霊怪猫屋敷のhorahukiのレビュー・感想・評価

亡霊怪猫屋敷(1958年製作の映画)
4.8
めちゃくちゃ面白い!!
小林正樹『怪談』や中川信夫『東海道四谷怪談』はツボ中のツボで、色々日本の怪談映画を見ようと思って手に取ったのですが、とんでもない大傑作でした!

本作は現代編、時代編の二部構成。現代編は妻の療養のために北九州の古びた屋敷に引っ越してきた夫婦を襲う怪猫の恐怖を描くお話。時代編は、その怪猫が、怪猫となった経緯を描く時代劇。青味がかったモノクロ映像の現代編に対し、カラー映像の時代編という見せ方が印象的。

まず、現代編のクオリティの高さにテンション上がりまくり!静かな暗闇の中、廃屋同然の荒れ果てたお屋敷に初めて足を踏み入れる時の異様な雰囲気。母屋に向かう途中、ふと横に目をやると離れの扉が開いていて真っ白な服を着た老婆が臼を引いているのが一瞬映る。そこから長回しで正面の母屋→再度離れとカメラを動かすともう老婆はいない。こういったさり気ない恐怖演出が抜群にうまい。さすが怪談映画の巨匠、中川信夫監督です。

老婆の映し方が巧みで、長い白髪で白いボロという出で立ちによる強みとモノクロ映像を最大限に利用した素晴らしい演出の数々。あまり目立ったことをせず、ただそこに立っていることだけで恐怖を与えるという小細工なしの純粋な恐怖演出が最高すぎて感動しました。鏡を使った演出なんてのもウットリです。

時代編は『鍋島猫』を根底においた怪談。怪談ものは「封建社会への反発」というテーマを根底においていて、理不尽なことをされても文句も言わずにただただ支配階級に従わなければならないことへの不満や恨みが怪異として姿を現わしたものが多い。現実では歯向かうことができないからこその、怪異という死後の世界からのカウンター。一般的に幽霊に女性が多いのも、現実で男性に虐げられた女性の不満や恨みの現れ。『四谷怪談』なんてまさにそうですよね。

本作ももちろんその流れを汲んだ怪談で、頭がおかしいパワハラ家老に理不尽な理由で殺された男が大事にしていた猫(たまちゃん:可愛い(๑˃̵ᴗ˂̵))が、怪猫と化し家老含め一族末代まで祟るという物語。もちろん虐げられる女性というテーマもしっかりと盛り込み、社会に虐げられる男性・女性双方の恨みの代弁者として復讐を開始する怪猫の恐ろしくも応援したくなるダークヒーロー的なキャラクターが物語に引き込む。家老の屋敷に入り込んだ怪猫が内部から徐々に一族を侵食していくのはある種の爽快感すら覚えます。

この時代編を受けた上で現代編に再度戻ってくるのですが、老婆(怪猫)に篭った強い未練が現代編を恐ろしくも悲しい物語へと変貌させる。ここでも気をぬくことなく、声による古典的かつ効果的な恐怖演出により緊迫感を高めている。そして人の業の深さとある種の救いに帰結する幕切れもいかにも怪談的で素晴らしい。

『東海道四谷怪談』を見た時にも思いましたが、中川信夫監督は間違いなく日本が世界に誇るトップクラスの素晴らしいホラー作家。ホラー以外の作品の方が圧倒的に多い監督なので、そう言われるのは本人からしたら不本意なのかもですが、めちゃくちゃうまいんだから仕方ない!(笑)

怪猫ものがツボということがわかったので色々と見ていこうと思います。ちなみに怪猫映画は怪談映画の中でも最多作品数を誇る一大ジャンルで、本作が元にしている『鍋島猫(佐賀猫)』の他にも『有馬猫』『岡崎猫』の3つに大きく分かれます。作品数であの有名な四谷怪談をはるかに上回るというのが凄い。今では全く作られなくなりましたけどね(^_^;)

怪猫含め、怪談映画は当時の荒く薄暗い味のある映像、わざとらしい演技やセリフ回し等が大きな構成要素になってると思うので、今作っても絶対面白い作品は作れないと思いますが、一回全力で作ってほしいとも思います。