しばいぬたろう

ゾンビ/ディレクターズカット完全版のしばいぬたろうのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

『ゾンビ』('78)
Dawn of the Dead / アメリカ合衆国 / 英語

ディレクターズカット版を鑑賞した。
個人的には邦題ミスだと思いました。


世の中では突如、死体が蘇って人肉を喰らうというパニックに陥っていた。
テレビ局勤めのフランシーン・パーカーは、ヘリコプターのパイロットである恋人スティーヴンと共に、報道を打ち切って町から脱出することに決める。
町ではあるアパートで立て籠る過激派をSWAT隊員が制圧しており、中では死者が蘇りゾンビたちが徘徊しているのだった。
SWATの隊員ピーターとロジャーもここから抜け出し、スティーヴンの誘いを受けて四人でヘリコプターで脱出することに成功する。
やがてヘリコプターはショッピングモールへと到着し、中のゾンビを一掃して周囲を塞ぐことに成功した四人は、ショッピングモールで平和な日々を過ごすことに成功するが…。


ゾンビ映画の元祖ジョージ・A・ロメロの最初期の作品。
この頃からしっかり面白くテンポ良く作られており、40年以上前の作品でも楽しく鑑賞できる。
今ではゾンビの設定が確立されて、走るゾンビや考えるゾンビ、更にはゾンビとの恋愛映画という奇想天外な設定に発展しているが、当時からこれだけ作り込まれていることが流石。

本作のゾンビはなかなか噛みつかず、米ドラマ『ウォーキング・デッド』と比べると、ゾンビに対する恐怖は少ない。
しかし、こういう世紀末世の中になった際に、「ショッピングモールを押さえる」「悪役集団が破壊者として登場」という認識が、当時から強調されている。
残念だったのは、女性が妊娠している設定が、あまり重要視されていなかったこと。

後半の人喰いシーンはかなりしっかり作られており、グロいシーンが苦手な方には勧めません。
死亡するキャラクターや展開も良かったも納得で、生き残るキャラクターも納得。

また、ショッピングモールでの生活はこちらの想像を掻き立てられ、「自分がこの立場だったら」ということを考えながら鑑賞すると楽しい。
ちなみに自分だったら、同じようにヘリの近い上の階に基地を用意し、侵入者が入って来た時のために、もっとしっかり籠城コーティングをする。
本作で一番あり得ないと思ったのは、食べ物を保管している冷凍室を死体置き場にしたこと。
そもそも電気が通じていることがおかしいのだが。

主要な登場人物が四人と覚えやすく、キャラ設定もしっかりしていました。
ロメロ的ゾンビ作品らしく、静かに展開していく点も好み。
ゾンビは走らなくとも、しっかり演出で絶望感を味わせることはできるのです。

夜明けとともに物語が終わるのも良かった。
モールに流れる明るい音楽が、これまた非現実的で良かったです。

ゾンビ映画が好きなら本作の鑑賞を強く勧めますが、人喰いシーンははっきりしており、内臓が出てくるシーンもあるので、グロいのが苦手な方は鑑賞に注意が必要です。
しばいぬたろう

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