うめ

ゾンビ/ディレクターズカット完全版/米国劇場公開版のうめのレビュー・感想・評価

3.8
 ゾンビ映画の第一人者ジョージ・A・ロメロ監督作。『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』に続くゾンビ映画第二弾。観たいなぁと思っていたのだが、ようやく鑑賞。

 ゾンビが溢れかえっているアメリカで、ヘリコプターを使ってなんとか生きて脱出しようと試みる4人のグループのお話。もうこの辺りの設定やストーリー、その展開は現在では定番となっていますよね。グループ内の人物設定や役割も既に定番。妙に武器の扱いに長けてる人、ちょっと調子に乗っておバカな行動に出ちゃう人、臆病な人、一番まともな人…皆成り行きでグループになったから、あのぐだぐだでまとまりのないチームが出来上がって色々面白い展開が繰り広げられる訳ですよね(笑)

 また主な舞台がショッピングモールというのも、どこかコミカルで面白い。普段は買い物客で賑わう場所で、まさかゾンビと戦うことになるとは。随所に興味深い描写が盛り込まれていて、ただゾンビが歩いているだけのシーンでも飽きずに観られた。

 しかしこの頃のゾンビは意外と弱かったのですね(笑)近くに人間がいても気にしなかったり、肩にぶつかる程度ですぐ倒れるし、たくさん近寄ってきても振り払えば意外と噛まれないし…でも人間の肉が大好物で、(一人の人間に多数のゾンビが襲いかかるシーンは観たことがありましたが)人間の皮を引っ張って腸をべろんっと出したり、チキンみたいに骨にしゃぶりついたりするシーンがあったのは興味深かった。ちゃんとゾンビの恐怖が表現されていた。またテレビ局員のスティーブンがショッピングモールのボイラー室で一人のゾンビに追われるシーンは、速い画面転換や影の使用によって、サスペンスっぽい恐怖感を煽っていたので良かった。その他の演出も、既に見慣れてしまっているけれど、当時は斬新だったんでしょうね。あ、でもゾンビの青白い顔とフランシーンの体調悪い顔が、照明の具合か何かですごく似ているシーンがあって「あれ、フランシーン噛まれたっけ(笑)?」とちょっとややこしく感じました(笑)

 もはやゾンビはジャンルとして確立されている訳だが、それはやはりロメロが生み出したゾンビ映画に多くの「余白」があったからだと思う。ゾンビが生まれた理由が明示されていないこと、ゾンビのいる場所から脱出するという簡単なストーリーなど、ぼんやりしている部分が多かったからこそ、後の監督や脚本家が自分なりのゾンビ映画を制作できたのだと思う。また「余白」があるからこそ、ゾンビやゾンビのいる環境が現代社会のメタファーとして解釈されたり、描かれたりしたのだろう。今作も(監督が意図したかどうかはともかく)ただゾンビと戦う映画として見ることもできるが、見方次第では色んな見方ができる映画になっている。

 ゾンビ映画はその後、コメディになるなどまだまだ進化中。…うん、やっぱりロメロのしたことはすごいです。