タマル

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちのタマルのレビュー・感想・評価

2.4
まずこの映画がこんなに評価高いのに驚く。

登場人物に中流が出てこない映画で、見てる方々はそこそこ豊かな中産階級の人々でしょうから、そりゃ客観的に見られて結構な話なんでしょうが、私のようなドロップ勢は教授に「ゴリラども」とか呼ばれてた人たちの立場なもので、天賦の才を持つものの選択とか言われても……みたいな感じなんですよ。
アレですよ。「自分の好きなことをやりなさい」とか、言ってたけども。私らの人生はウィル・ハンティング君とかのそれじゃなくて「岸和田少年愚連隊」とかの感じですから。ヤクザor暴力団orフリーター、あなたはどちら?みたいな。しかも、人間性は『アマデウス』のサリエリみたいな感じなんで。あんなベン・アフレックみたいな美形で出来た労働者階級友達とか出されると、勢い「ナメてんのかゴラァ!」とかなっちゃいますよね。底辺ナメてんのか!って。
私のベスト映画とか見ていただけばわかると思うんだけど、多分私のような人間のアクチュアルな問題意識の所在は
「自分がこの世界で最も底辺で、醜くて、下らなくて、不愉快で、誰よりも劣った存在だったとしてそれでも生きていくには」
というところにあると思うので。
はっきり本作の対極なんですよね。もちろんフィクションだからそれはそれとして楽しいんだけども、ちょっとクズの薄汚さを排除しすぎてて、疎外感はあったかもね。ハンティング君がいなくなった後のベンアフレックはどう生きてくのかなぁ。凡人は結構そっちのほうに興味が湧くと思うんですけどね。

あとダメな点としては、暴力描写は全部ダメ。
なにあのスローモーション? 何がやりたいの?ヌルくするだけでなんの効果も出てないよ。あとマウントで殴るカットとか、首絞めるカットとか、なんか段取り臭くて。この世界には決定的な暴力とかは起きないんだなぁとわかってしまって没入感が著しく損なわれました。

それと恋愛至上主義ね。
再三云うんだけど、反吐がでるんすわ。
最後あんな終わり方ならあの最高の友達と一緒にいるでよかったやろ!! 要は、あいつらは友達だけどIQが離れすぎてて魂が触れ合うような付き合いは出来ませーんてことだろ? じゃあやっぱりベンアフレックのあの理屈はおかしいって。「宝くじがうんたらかんたら」だから送り出すのが当然、俺らも君がここから出ていくのを期待してるとかそういう考え方は、それだけだったら単なる自己卑下だろ?フィクションなら、天才でない多くの観客に近しい彼ら凡人が、どうやってそれでも自己肯定のうちで生きていくのかまで描かなきゃダメでしょ。
でも、恋愛関係を諸関係の最上位に配置するために、意図的に人物(今回は友人)の図式化が図られ、脇は物語のために奉仕する操り人形になってしまう。彼らの人生は物語の埒外なんだ。こういうとこに恋愛至上主義的ないやらしさ、ヒエラルキーの自明化と優越性の無批判性が表面化してる。
ほんと寒気がするわ。

そんな感じです。
でも、えいがとしては普通に面白かったんで、このスコアです。
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