キャッチ30

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちのキャッチ30のレビュー・感想・評価

3.8
 マット・デイモンはインタビューで今作はロバート・レッドフォード監督の『普通の人々』の影響を受けていると言っていた。そう考えると、デイモン扮する主人公ウィルとロビン・ウィリアムズ扮するショーンの関係性は『普通の人々』のコンラッドとバーガー医師の関係に似ている。

 舞台はボストン。ウィルは天才的頭脳を持つが、養父からの虐待がトラウマとなり、心を閉ざし、荒れた生活を送っていた。ある日、マサチューセッツ工科大数学科教授のランボーが学生たちに出した数学の難問をウィルは簡単に解いてしまう。ウィルの才能に気付いたランボーはウィルを更生させる為に、コミュニティカレッジで心理学を教える学友のショーンにウィルの精神鑑定を依頼する。

 主要人物はそれぞれ大切な人を喪失している。ウィルは両親を、ショーンは妻を、そしてウィルの恋の相手である女学生スカイラーは父親を失っている。そんな彼らが心の触れ合いを通して再生していく様子を描いている。ウィルの親友チャックがウィルに喝を入れる場面も捨てがたい。

 脚本を務めたデイモンとベン・アフレックは当時無名だった自分たちの境遇を役に重ねている。ボストンの街並みや天才と凡人の違いを自分たちの経験を交えながら書き込んでいる。黒板に数式を書くシーンはデイモンの弟が黒板に書いた落書きが元ネタになっている。

 デイモンはウィルの人物像を不良の鎧を着た天才、或いは狼の皮を被った羊として造形する。正直、今作のデイモンは演技が巧いとは言えない。不良の役柄が本人とマッチしていないのもあるが、芝居が一本調子に感じる。それをカバーしているのが、ウィリアムズの存在だ。ウィリアムズは『グッドモーニング、ベトナム』で見られた毒とユーモアを封印し、包容力で勝負する。その結果、とてつもない化学反応を示す。今作でアカデミー賞を受賞したデイモンとアフレックの他に、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で受賞するケイシー・アフレックの存在も忘れてはならない。