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アリランの一のレビュー・感想・評価

アリラン(2011年製作の映画)
3.6
キム・ギドク監督によるセルフドキュメンタリー

今観ると内容とは別にいろいろな思いが胸にこみ上げてくるけど、この映画の翌年に『嘆きのピエタ』で金獅子賞受賞という非常に感慨深い側面もあるドキュメンタリー作品

ほぼ1年に1本のペースで新作を撮り続けていた韓国の鬼才キム・ギドクが、2008年以来映画界から遠ざかり、山中の一軒家で隠遁生活を送っていた自らの姿を捉える

カンヌ、ベルリン、ベネチアの世界3大映画祭でそれぞれ受賞という快挙を成し遂げているにもかかわらず、国内での低い評価とのギャップや、仲間から受けた裏切りについてなど、内に秘めていた心情を吐き出していく姿が映し出される

「自らに疑問を投げかける自分」
「それに答える自分」
「それらを客観的に分析する自分」
と、3人の自分を演じながら心の内をさらけ出し、ぐちぐちとうちに秘めた想いを吐露するかと思えば歌ったり笑ったり
かと思えば怒ったり泣いたりと起伏が激しいので、キム・ギドクを知らない人からすると、ただの酔っぱらいにしか見えないかもしれない

一応映画的な要素が後半にはあるんですが、正直ドキュメンタリーとしての面白味はそれほどなく、あくまでギドク作品が大好きな人向けのドキュメンタリー
しかし、山小屋での隠居生活やチャン・フン監督との関係性、自分の映画を観ながら涙を流したり、何でも手作りしてしまう器用さなどとと、ギドクの知られざる一面を沢山観られただけで大満足
監督のファンであれば間違いなく必修レベルの1本です

〈 Rotten Tomatoes 🍅※33% 🍿52% 〉
〈 IMDb 6.9 / Metascore - / Letterboxd 3.3 〉

2020 自宅鑑賞 No.582 GEO
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