マヒロ

やくざ絶唱のマヒロのレビュー・感想・評価

やくざ絶唱(1970年製作の映画)
3.0
喧嘩っ早い乱暴者のヤクザ・立松(勝新太郎)は、父親の違う歳の離れた妹のあかね(大谷直子)と二人暮らしをしており、可愛がりすぎるほどに溺愛していた。しかし度を過ぎて彼女を守ろうとするあまり極端に束縛され周囲から浮いていくあかねは、徐々に兄に反発するようになる……というお話。

傍若無人を絵に描いたような立松を演じる勝新太郎がやっぱりハマり役で、異様に喧嘩が強くて手足をぶん回しているだけで周りの人間をなぎ倒し、妹のためなら恐喝暴行厭わず暴れまくる様は最早獣。妹のためを思って行動しているのは間違いないが、彼女の考えを認めず自立も許そうとしないあたり独りよがりな考えで動いているに過ぎず、自分の思い通りの人間にしようとしている節がある。若い頃からやくざものになり彼女のために金を稼いできたという恩はあるものの、あまり良い兄には見えない。

中盤になると話のメインは立松からあかねの方に移って行き、強烈な影響力を持つ兄に悩む彼女が実は主人公だったことが分かってくる。おんぶに抱っこではなく1人の女性として生きていきたいあかねの人物像はいかにも増村監督的だし、この転換にも納得ではあるけど、勝新のやくざものとしてみるとちょっと物足りないところはあるかも。

最終的には割と普通の結末に落ち着いていくんだけど、ここは湿っぽ過ぎてイマイチだったかも。狂犬には最後まで共感性のない狂犬でいてほしかったなぁ。

(2019.266)
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