Ricola

シェルブールの雨傘のRicolaのレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
3.8
4年前に初めて鑑賞したが、再鑑賞したので投稿し直し。

ジャック・ドゥミの色鮮やかなおとぎ話のような世界観と、現実的なストーリー展開というそのバランスが絶妙である。
「恋で死ぬのは映画の中だけよ」という、ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の母(アンヌ・ヴェルノン)が放つ台詞も、現実を突きつけるアクセントとなっているようだ。


この作品については、やはりまず色の使われ方について言及したい。
主に青とピンクの色分けによって、ジュヌヴィエーヴと彼女の恋人のギイの服装、仕事場や家の雰囲気をわかりやすく対比して見せる。
例えばギイの働くガレージの青、ギイの服、ギイの伯母とのアパートも一部青い。
それに対してジュヌヴィエーヴの傘屋さんはピンクを基調としている。
ジュヌヴィエーヴも明るいピンクの服やリボンを身にまとうことが多い。
また、緑色がその二人の熱い恋心を冷静に見守るような役割として、作中に散りばめられているように感じた。
例えば、ギイがおばと住む緑のアパートや、ギイの友人のマドレーヌの濃い緑の服。さらにジュヌヴィエーヴの母も濃い緑を身につける。

それからジュヌヴィエーヴとギイのデートのシーンもいい。
ダンスホールの赤に合わせて、ピンクでリンクした二人のコーディネートによる画面の統一感。
恋に夢中な若者たちの多幸感に満ちた雰囲気作りに、この色合いが役立っているはずである。

このペアルックのような色合いは他で見られる。ギイのガソリンスタンドに行くときのジュヌヴィエーヴは、水色のワンピースを着ている。
彼ももちろん青い服を着ており、ガソリンスタンドももちろん青い。

他に気になった箇所は、ローランというキャラクターの背景が語られるシーンである。彼は、かつて愛したローラについて語るのだ。
そのときに『ローラ』との思い出の地、ナントのあのLe Passage Pommerayeの映像が插入されるのだ!
同じ人物を複数の作品を横断して登場させるこの手法に、ドゥミの優しさを感じる。

そしてもう一つ個人的なお気に入りシーンがある。
それは、ウェディングドレスを着てベールを被ったマネキンたちの中、ジュヌヴィエーヴがベール被って紛れ込んでいるシーン。
カトリーヌ・ドヌーヴのまさにお人形のような美しさに、特にハッとさせられる印象的なシーンであると思う。

鮮やかに彩られたかわいらしい世界観に目を奪われつつも、夢を見ることばかりを推奨しないその冷徹さにぐっとくる。
とは言っても、その厳しさの中に心あたたまる要素もあるため、共感を得やすい部分も多い作品であると思った。
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