わたふぁ

シェルブールの雨傘のわたふぁのレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
3.8
ひさびさに観たけど、なんとカラフルな映画なんでしょう。
モネがちょうどチューブ入り絵の具の誕生に歓喜して色を使いまくった状況と似ていて、カラーで映像が撮れることへの祝福を体現したような美しい作品。

若い2人の恋愛・結婚に、経済的なことや戦争という時代が絡んでくる、現実的なラブストーリーだと思う。
好き好き好きを主成分として激情的に物語が進んで、政略結婚をさせられて後で親を恨んだり、自分の人生を後悔したり、、っていうラブストーリーは実は非現実的。それは60年代のこの時点で“古い恋愛モノ”だったんじゃないかと思う。

この映画には、おとぎ話に出てくる継母や老婆のような、明らかにイジワルな気持ちを持った人や悪い人は出てこない。ただただ“運命のイタズラ"がこの結果を招いている。そんな、切ないけど誰も悪くないリアルなラブストーリーだったから、人々の共感を呼び続ける不朽の名作となり得たのではないかと思う。

全編歌うスタイルのミュージカルで、感情の機微は排除されているんだけど、人間の弱さやズルさ、意思ってものはちゃんと描かれていて、後味はちゃんと残るから不思議。