Narmy

シェルブールの雨傘のNarmyのレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
4.4
斬新なオープニングの映像は、これから起きる物語を予感させる。
この一つの場所でいろんな人生が交差し、連なり、彩られたり色味がなくなったり、、、このシーンだけでも観てよかったと思える美しさ。

全体としては、耳に心地よい音楽と一見奇抜な組み合わせの色彩が融合し、ストーリーは三部構成のまさにミュージカル。
まさかの全てのセリフがメロディに乗っていて、最初のうちはどこまで耐えられるかと身構えてしまったものの、徐々に慣れてきた😆
英語だとメリハリのある盛り上がりが必要だけど、全て歌という平坦な感じをすんなり受け入れられたのはフランス語だからだったのかもしれない。

若者の未来を夢見る幸福の絶頂から突然つきつけられる現実との葛藤。
未来が予知できるわけではないんだから、悩み苦しんだあとどちらを選んでも幸せな未来が確実にくるなんて誰にも分からない。
愛する気持ちや人生の大きな決断、少しのタイミングで思いがすれ違う重苦しい様子をぎりぎりのところで華やかな映像が支え、まるで儚い夢を観ているような気分になる。

若さからくる純粋な熱い思いも愛なら、穏やかな心安らぐ日々を紡いでいけるのもまた愛であるということ。
情熱的な愛を知らなければ穏やかな愛にも気づかないのかもしれないな。
年を重ねるってそういうことなのかも。

この作品、少し前でも少し後でもなく、今この時に手に取ったのは運命のようで、わたしにとってはある意味最大限共感できるベストなタイミングだったような気がする。
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