ほーりー

シェルブールの雨傘のほーりーのレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
3.7
年間通して一番降雨量が多いのが9月なのだそうだ。確かに今月はまともに晴れていた日が少なかったように思う。

雨に関係する映画も色々あるけど「シェルブールの雨傘」のオープニングシーンも印象深い。

フランス北西部に位置する港湾都市シェルブール。その街を舞台に「シェルブールの雨傘」という傘屋さんの一人娘と自動車修理工との恋模様を描いたミュージカル作品である。

貧しいながらも将来は一緒になることを誓った二人だったが、彼のもとに召集令状が届いたことで運命は違った方に動き出す。

映画は、彼が出征するまでを描いた第一部(旅立ち)、彼がいないことの寂しさに苦しむ第二部(不在)、そして兵役を免除されシェルブールに帰ってくる第三部(帰還)の三部構成となっている。

全編セリフが歌になっていたり、カトリーヌ・ドヌーヴの美しさが際立っていたり、キュートな色遣いやセットが洒落ていたりと、様々な要素で成功した作品。

だけど何といってもこの映画が画期的だったのは、現実ばなれの世界がウリであるミュージカル映画において初めて現実を描いた点であると思う。

この辺りは「ラ・ラ・ランド」の後半の展開とよく似ている。

それまでも「ウエスト・サイド物語」のような悲しいラストの作品はあったものの、あれはシェークスピアの「ロミオとジュリエット」がベースで作劇的な要素が強い。

セリフが全て歌になっているのも、あくまで地のセリフのシーン(現実)と歌のシーン(非現実)の境界線をなくすことが狙いであるようにも感じる。

またミシェル・ルグランのメロディーが切ないんだ、これが。

奇をてらっただけの作品にあらず。

■映画 DATA==========================
監督:ジャック・ドゥミ
脚本:ジャック・ドゥミ
製作:マグ・ボダール
音楽:ミシェル・ルグラン
撮影:ジャン・ラビエ
公開:1964年2月19日(仏)/1964年10月4日(日)
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