賽の河原

シェルブールの雨傘の賽の河原のレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
3.7
「ミシェル・ルグランとヌーヴェルバーグの監督たち」の特集上映、魅力的なラインナップだったのでね。本作と『ロシュフォールの恋人たち』は何とか劇場で観たいと思ってたんですが、結局これしか観れなさそうですね。つら。
『ラ・ラ・ランド』のオマージュの元になってるってことで、数年前に一度ソフトで見てましたけど、劇場で観たらかなり印象が変わったっていう。正直ソフトでは退屈さを覚えたんですけども、劇場で観る分には最高に面白かったですよね。
話変わりますけど、「なんで急に歌うの?踊るの?ミュージカル映画ムリ!」マンっているじゃないですか?あれ何なんですかね?wめんどくさいですよねw
私、別にミュージカル映画とか大好きってこともないですし、音楽に丸め込まれてる気がする猜疑心の塊マンですけど、急に歌うからとか踊るからってレベルの理由でジャンル全体を苦手と言い切れる大胆さ、俺も身につけていきたいっすね。まあ「急に歌い出したり踊ったりとかさ〜」って「言ったった感」ありますよね。でもあまりに陳腐で使い古された物言いじゃないすか?普通にその視点以外で言えることないの?っていう。まあいいや。
そういう意味では本作『シェルブールの雨傘』はそういう低レベルなミュージカル苦手マンたちを一撃で焼き殺せる仕様でね。最高ですよ。「いや、逆になんで歌わないの?」っていう。もう全編、全セリフが歌ですからね。
オープニングからすごくデザインされていて最高ですけど、色彩も美しくてね。今回よく見て改めて気づきましたけど、単なる極彩色、カラフルな感じってわけじゃなくて、服とか壁とかバッチリ柄物なんですよね。なんか単体としては美しくハマりそうもない柄物を総体として美しい色彩に仕上げてるバランス感覚がすげえなと思いましたし、まあぶっちゃけ登場人物もロケーションも数が絞られているのに、約90分退屈せずに観られるのってすごいよね。
シンプルにルグランのスコアも素晴らしいと思いますし、実は室内の見せ方もうまかったり、キッチュで人工的な世界観がなかなか攻めててね。なんか今となってはミュージカル映画の不朽の名作的な扱いになってますけど、普通に前衛的ですらありますよね。
不勉強にして調べてないんですけど、アルジェリア紛争の話とか第四?第五?共和制のあたりの時期的な意味とかも調べてみると奥行きがあるんじゃないですか?知らんけど。
終盤はまあ有名な展開なのでアレですけど、今回年齢を改めて見ると異常に大人でドライなエモさですよね。
まあ現代の華やかな映画と比べたら幾分さっぱりしすぎていて、なんなら人によっちゃ味の薄さを感じる人もいるでしょうけど、こういうクラシックを映画館で観れるっていうのは本当に最高ですね。
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