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風の惑星/スリップストリームのrollinのレビュー・感想・評価

3.8
風の谷のスカイウォーカー。

ルーカスと袂を分かったのち、ヨーダと組んだ『ダーク・クリスタル』や『オズ』を経て、マーク・ハミルと共に再びフォースの上昇気流に乗ろうとしたゲイリー・カーツ入魂の一作。

文明が崩壊し、生き残った少数の人類が風力に頼って生活している世界。保安官のタスカーとエリアルはお尋ね者のバイロンを捕まえるが、賞金稼ぎのマットに横取りされてしまう——

“ジブリ版ブレードランナー”と例えれば聞こえは良いけど、かなり弛緩しきった仕上がりで、『マッドマックス/サンダードーム』をさらにフワッとさせたような感じ。でも全然キライじゃなくてむしろ好きな映画。

とにかくマーク・ハミル演じるタスカーのビジュアルが格好ええ!
デッカードと『DUNE』でスティングが演じたフェイドを足して割ったようなダーティな意匠。この時代が一番セバスチャン・スタンに似てるかも。エリアルの肩にもたれてうたた寝してる姿がかわいい。

既視感バリバリの世界観も意外とビジュアル的説得力に溢れていて、保安官たちの乗るグライダーもドローンのように無骨で渋いし、トルコで撮影されたかつてのカッパドキアを再現したような風の谷の風景もめちゃくちゃ美しい。ICOやワンダの上田文人作品を思い出す。

賞金稼ぎのビル・パクストンはあまり目立たず。他のキャラがウェイストランド風ファッションで決める中、一人スーツを貫くボブ・ペックの存在感が際立つ。スーツがボロボロになってくのも良い。
物語の展開とは裏腹に危機感のない音楽や、牧歌的な人々の暮らしはむしろ楽しそうで、その辺りの緊張感のなさも今では逆に個性だと愛でたくなる。つじあやのが流れても最早違和感ない。

申し訳程度にSWとエイリアンを手掛けたブライアン・ジョンソンが参加してるけど、本作は特撮より空撮に力が入ってます。

人間らしさとか文化とか自然破壊とか夢とか、色々取り入れすぎてとっ散らかってるけど、マーク・ハミルがちゃんと締めてくれる。やっぱ好きやわ。
自分はVHS持ち。そろそろ紀伊國屋、発掘良品でリマスターDVD出んかな??
そんな風にして彼の素晴らしい仕事がもっと多くの人に伝わって欲しい。


R.I.P. ゲイリー・カーツ。
理力の守りあれ‥‥
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