みおこし

蝿の王のみおこしのレビュー・感想・評価

蝿の王(1990年製作の映画)
3.5
舞台は近未来。疎開中の飛行機が無人島に何とか不時着、乗っていた少年たちは命からがら逃げ出す。当初は協力し合っていた少年たちだったが、極限状態の中で次第に理性を失い始め対立が起き始める...。

ウィリアム・ゴールディングによる問題作の二度目の映像化。無人島に取り残された子供たちの狂気の沙汰を描き、人間の醜い部分をこれでもかというくらいリアルに映し出した名作。
ただでさえ無人島サバイバルものは怖いのに、それを子供たちが演じている時点で言葉を失います...。物理的にグロテスクというよりも、子供たちの理性を失った発想がとにかくグロテスク。
しかし人間は誰しもこのような極限状態では同じように理性を失ってしまうものなのでしょうか...。そう思うととても他人事とは思えません。

無垢な少年たちだからこそ、何のためらいもなく人を傷つけたり殺めたりすることができる。仲間外れになるのが一番怖いことだから、それが間違った選択であろうとも無理やり同調して強者に従わざるを得ない。
純粋すぎるがゆえに、大人以上に洗脳されやすく、心無い一言を平気で口にできる彼らの創り上げる「社会」は何よりも危険を孕んだ世界でした。

子供たちの熱演も圧巻でしたが、あの閉鎖的な島の演出がとにかくおどろおどろしくて怖かったです。有名な「蝿の王」モチーフのシーンも、ダイレクトに豚を切り刻む描写が出てくるのでショッキングな演出が苦手な方はお気をつけください。

実は終盤の全力疾走シーンを幼い頃に観たことがあって興味を持ち、15年くらいかけてタイトルを突き止めたという経緯がありました。でも今となって最初からちゃんと観ると当時の小学生の私には本当に精神衛生上よろしくない映画でした(笑)。
ラストはハッと息を飲む展開、しばらく思考停止するとともに後から虚しさに襲われて、本当に後味悪かったです...。キツイ一本だったなあ...。
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