おなべ

ノルウェイの森のおなべのレビュー・感想・評価

ノルウェイの森(2010年製作の映画)
3.4
◉「死」と「情愛」の狭間で揺れ動く、若い男女の心の深淵を映し出した純文学作品。PG-12では足りないと感じるくらい露骨な性描写(性交シーンや卑猥なワード)があるため、親子で観るのはオススメしない。

◉高校生のワタナベは、親友のキズキと、そのガールフレンドの直子と親しくしていた。とある日、何の前触れもなくキズキが自殺した。それ以来、直子とは疎遠になっていたが、東京の大学で偶然再会する…。

◉《村上春樹》の原作『ノルウェイの森』を、アカデミー賞ノミネート経験のある《トラン・アン・ユン》監督が実写映画化。タイトルの由来は、世界的音楽グループ〈ビートルズ〉の楽曲「ノルウェイの森」から。

◉原作未読。聞くところによると、原作を読んだ人も読んでない人も含めて賛否両論あるらしく、人によって解釈が変わるタイプの典型的な作品なんだとか。すなわち、解釈が変わると、全く別物の作品になるという事。そして本作は、監督のフィルターを通じて描かれた『ノルウェイの森』。

◉草原の新縁や壮麗な雪景色など、豊かな自然描写が印象的。ゆったりとした時間の中で、木々の呼吸や水のせせらぎが画面越しに伝わってくるような、自然味溢れる映像だった。

◉登場人物らの独特なセリフの言い回しも印象に残った。いかにも純文学に出てくるような、ひと昔前(まだ学生運動が盛況だった頃)の学生のそれで、格調漂う言い回しに、令和を生きる自分には少し違和感を覚えたり。

◉「情愛」
1)いつくしみ愛する気持ち
2)深く愛する心
3)なさけ
4)愛情

◉作中では、幾度となく「死」が登場し、その度に登場人物らに深い喪失を突き付ける。そして、深い喪失に直面した時、心の穴を埋めるために「性」に縋る。互いの気持ちを確認し合うように、時には「死」を紛らわすために、男女は本能の赴くままに互いを求め合う。それを「情愛」という言葉で片付けるには、安易すぎる気もするけれど、この「情愛」こそが、渇いた人の心を満たす唯一の営みなのかもしれない。











【以下ネタバレ含む】











◉「寝た」「寝てない」「寝るべき」「濡れてる」「濡れてない」「ヤッた」「ヤッてない」etc…若い男女の話題は、常に「性」が中心。今とは少し違ったオープンな貞操観念に戸惑いを隠せず…。

◉ワタナベ
「君と会って話がしたい」??⁇?
「勃起してるかという事なら、してるよもちろん…」←(オェッ! )
ただ、それらしい上っ面の言葉を並べて、女性を抱こうとする浅ましさに嫌悪感を覚え、主人公の言動すべてが受け付けなかった。

◉ワタナベ
「悲しみを悲しみぬいて、そこから“何か”を学び取る事しか、僕らにはできない。そして学び取った“何か”も、次にやって来る悲しみに対しては、何の役にも立たないのだ」
→本作の本質を突いた、ある種の答えのような印象的な台詞を抜粋。


ps: 最近、知り合いに《松山ケンイチ》に似てると言われ顔を見比べたものの、あまりにもかけ離れており、我ながら爆笑。肌ツヤがよく、顔立ちの整った《松山ケンイチ》とは似ても似つかない現実に切なくなったけど、これからも胸張って生きようと思う…。;)
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