悠緒

ノルウェイの森の悠緒のレビュー・感想・評価

ノルウェイの森(2010年製作の映画)
3.9
そこまで酷いものじゃあない。
原作を偏愛する私にとって、傑作とは認めがたいが、それでもそこまで酷いものじゃあなかった。
が、本作は一言で切って捨てれば、原作の、粗いダイジェストだ。
粗いダイジェスト以上の何かではない。
とくに前半は刈り込みすぎだし、全体的にばっさり大事なシーンをいくつも捨てているところが残念至極。
2時間なんかに収めず6時間くらいの作品にすれば、もっとマシな映画になったのではないか。
キャスティングはよかった。
ワタナベくんもキズキも永沢さんもハツミさんもレイコさんも突撃隊もよかった。
賛否両論あるであろう直子と緑についても、私的にはアリだった。
原作『ノルウェイの森』を私は優に十回以上は再読しており、大学時代にはその世界観に首までどっぷり浸かっていた。
作中の人物たちに、ある意味では現実の知人以上の親近感を抱いていた。
彼らは私の特別な友達だった。
にも関わらず、私は彼らの顔をひとつとして今まで知らなかった。
今回、映画化された『ノルウェイの森』を観て感動したのは、そこだ。
ああ、きみたちはこういう顔をしていたのか、と思った。
やっときみたちの顔を知ることができた、と。
ワタナベくん、直子、緑、永沢さん、ハツミさん、彼や彼女が、実体をもって、肉体をもってそこに存在していることに、非常に感銘を受けたのだった。
でもまぁ、なんていうか、小説で読んでいたら違和感がなかったストーリーも実写化すると、ずいぶんとイビツでムチャクチャな展開である。
とくに、ワタナベくん、きみ、なんなんだよ。おかしいぞ。
ていうか、出てくる人物、どいつもこいつもどっかおかしいんだけど……
悠緒

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