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人間の條件 完結篇のJeffreyのレビュー・感想・評価

人間の條件 完結篇(1961年製作の映画)
3.8
‪「人間の條件」‬
‪冒頭、昭和十八年の満州。雪降る中、行進する兵隊。そこに男女の姿。老虎嶺鉱山、満鉄調査部の二人、臨時召集令、軍部、‪今、一人の男が戦争という不条理な世界を彷徨う‬ ‬…本作は五味川純平の同名小説を巨匠 小林正樹が監督した全六部、九時間半の一大スペクタクル反戦映画の傑作にして、主演の仲代達矢の出世作でもある。これ以降 彼は名だたる監督と組み日本映画を世界に広めて行く。さてBDが発売されたぶり三度目の鑑賞したが骨太の作品である。現代描かれる戦争映画とは格が違う、パワーが違う、正に誇れる一本、崇高だ。やはりロケ地が北海道ともあって、高台な土地が広がり、そんな原風景の中に汽車が走り、貨物から捕虜が大量に降りて一斉に食事にありつく雪崩れの如く這いずり廻る描写は凄い、不謹慎な言い方をするならまるでゾンビ映画宛らだ。まず尺の長さがホロコーストを題材にしたショアとほぼ変わらない九時間超えの分、ここまで戦争に翻弄されていく一人の男の姿を長々と見せられる映画は他に無い。監督曰く軍隊生活を無理矢理させられ、青春を戦争の中で送った、そんな不公な経験から戦争否定を貫いたらしいが、本作の主人公梶の性格、信念が監督や原作者の五味に重なっていく。物語は第六部迄で、純愛篇から激怒篇、望郷篇、戦雲篇、完結篇の死の脱出、曠野の彷徨となる。主人公の梶は南満州鉄鋼会社に勤める。兵役免除を条件に鉱山の労務管理を任され、恋人との結婚し赴任したが、そこで彼が見たものは捕虜六百人で電気鉄条網に囚われた人々だった。彼は改善に尽力する。時は過ぎ関東郡代八十八部隊の二等兵として配属され厳しい訓練や新たな仲間との対立、虐待、自殺に遭遇する。そしてソ連が満州に侵攻する。時は経ち、ソ連軍との激戦をし、梶は避難民らと満州を目指すも、戦争が終わったから分からない状況下、食うものもなく、餓死寸前も米を大量見つけ、道中の家族連れや淫売二人に分け与える。そして人格が変わる極限状態に陥り、彼はソ連軍の捕虜になり、地獄を味わう…とネタバレせずに話すとこんな感じで、大河ドラマ好きにはお勧めできる作品。にしても、彼を知ったのはやはり「切腹」なんだが、今思うと不条理な世の中を斬る監督だったんだなと感じる。それは壁あつき部屋もそうだし、先程言った切腹も、サムライ精神への反定立だったし、本作も同じだ。そーいや製作の“にんじんくらぶ”って切腹だったか、本作で倒産になったよな…度忘れしたが確か小林正樹の作品でなった様な…違ったらすまん。まだ未見の方はお勧めです。最後にサロベツ原野での撮影は凄い当時の厭世的な雰囲気を醸し出していて素晴らしい。ロケ地にもなった為、北海道旅行でもする機会があったら行ってみたいもんだ。‬
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