ついにシリーズ通して脚本を務めているドン・マンシーニが監督デビューを飾ったシリーズ5作目。
この時期のドン・マンシーニはかなり『スクリーム』的な語りに傾倒していたらしく、冒頭から『ハロウィン』に『サイコ』を立て続けに引用した気合の入った殺人シークエンスに、劇中でチャッキーが映画の題材になり『チャイルドプレイ』がハリウッドで作られているメタネタも入り、さらに『グレンとグレンダ』のエド・ウッド引用に、『シャイニング』に『ロボコップ』まである。
ホラー映画パロディの満漢全席に前作から登場したティファニーの声を演じたジェニファー・ティリーが本人役で主人公を演じる徹底したメタ映画で、前作ラストで登場したチャッキーの息子(娘)がメインキャラクターという相当混乱した内容。
そんなわけなのでここまで来ると流石に何がどうなろうとどうでも良い感は否めず、ブラックコメディも行きすぎるのは良くないなというのは正直なところ。
とはいえ、脚本監督のドン・マンシーニ自身が同性愛者であることもあり、男なのか女なのか、という性自認の話でもあり、自分は何者なのか?というアイデンティティの物語でもあるあたりが意外と味わい深く、この辺りはセクシャルマイノリティ当事者が描くホラー映画としては、ライト過ぎる作風に対して思いのほかしっかりと語られていて独特の良さがある。
そして、これまで「人形の体を抜け出して人間の体を手に入れること」が主目的だったシリーズの一つの到達点として、チャッキーが出す答えこそ、ホラーアイコンとしての自らを高らかに宣言する瞬間であり、これがやりたくてこんな変な話をやったのかと。
要するに、前作で半ば反則的にメタネタ、ブラックコメディに振りすぎたことへの反省を踏まえた路線変更をこの一作の中でゆっくりと行おうとした形跡があり、本当に、シリーズを大切にしているんだなぁと伝わってきてジーンときてしまう。
傑作とは言わないものの無視されるのは不遇な特異なシリーズであることを改めて感じる一本。